2008年9月アーカイブ
「Co2見える化 井戸端会議室」では、早稲田環境研究所の研究員が身近な環境問題やCO2削減について、ご説明します。今回は「自動販売機と環境?」担当は"まつお"です。
前回お話ししたように、自販機は、24時間いつでも利用できるという便利さの半面で、消費電力量の低減が課題でした。
飲料用自販機のなかでもシェアの高い、缶自販機を例に取ると、消費電力構成比が冷却・加熱80%、蛍光灯15%、制御その他5%となっています。割合の大きい、冷却・加熱、蛍光灯、制御その他の順に省エネ対応を図るのが効果的ということになります。その対応の例を、いくつか示します。
消費電力の構成
(1)断熱材の改良
99年機では家庭用冷蔵庫で使われている真空断熱材を採用し省エネ性を高めています。
自販機の省エネでは、庫内の冷たさや温かさをできるだけ逃がさないでエネルギー効率を高めることがポイントになります。このため、従来は断熱性の優れた硬質ウレタン材を使用していましたが、最近の飲料自販機にはウレタンなどを真空パックし、金属フィルムで覆った保温効率の高い真空断熱材が使われるようになってきました。
(2)エコベンダー(ピークカット機能)
エコベンダーは、夏場、午前中に商品を冷やし込み、エアコンなどの使用により電力需要がピークを迎える午後(1?4時)は冷却運転をストップする省エネ型の缶飲料自販機です。
電力会社は、年間で電力需要がピークに達する時にも電気を安定供給するため発電所の新設などさまざまな努力をしています。エコベンダーは、この午後のピークの一部を午前中にシフトすることを目的にしており、これにより余分な発電所の新設を抑える効果も期待されています。
エコベンダーの設置は、95年から始まりました。現在では全国(電力ピークの大きくない北海道は除く)の缶飲料自販機のほぼ100%がエコベンダーとなっています。
ピークカット機能の概略
ただし、圧縮機を停止させるような機能については、紙容器の飲料を販売する自販機については利用できないようになっています。これは紙容器については食品衛生法による制限がかかっているためで、Coldで10℃以下、Hotで64℃以上に保持しなくてはならない規定によるものです。
※次回に続く・・・
2008/09/26
今回は、家の中で使うエネルギーとして、「電気」に注目してみます。もはや「電気」はあって当たり前の感覚ではないでしょうか?家の中で電気を使っている製品をリストアップしてみましょう。テレビ、パソコン、FAX、DVDレコーダー、冷蔵庫、エアコン、照明、・・・・・。たくさんありますね。
電気を節約すると、CO2排出量を減らすことができます。それを考えるにあたって、電気はどのように作られているかを考えてみましょう。電気は、「発電所」というところで作られます(電気を作ることを「発電」といいます)。みなさんも聞いたことがあると思いますが、その発電の仕方によって、火力発電、原子力発電、水力発電等のように呼ばれたりします。最近では、風力発電や太陽光発電なども注目されていますね。
このうち、CO2の排出要因となるのは火力発電です。火力発電では、石油・石炭・天然ガス等のいわゆる化石燃料を使用しています。したがって、発電するときにCO2を排出します(冒頭の「ポイント」を参照してみてください)。日本では、発電電力量の全体の約60%を火力発電で賄っています(ちなみに、原子力発電が約30%、水力発電が約8%、自然エネルギー等その他が2%です[1])。
みなさんの家庭からもうもうとCO2が出ているわけではありません。でも、家庭で消費電力量をみんなで減らせれば、発電所でのCO2排出量を減らすことにつながるわけです。
なお、シロクマランドにデータを入力していただいている方はわかると思いますが、使った電気の量(電力量)は、kWh(キロワットアワー)で表現されます。日本の場合、1kWhで0.3?0.4kgのCO2を排出しています。
[1] 資源エネルギー庁「電源構成の概要」より。火力発電や原子力発電などの構成割合を「電源構成」といいます。
2008/09/24
早稲田大学環境総合研究センター
准教授
株式会社早稲田環境研究所 代表取締役
小野田弘士
省エネ・省CO2を実施するといっても、いろいろな取組みがあります。
基本的な三原則は、
●運用改善......皆で意識して取り組むこまめな節電等のヒューマンな運動分
●調達改善......施設の照明を省エネタイプ等に変えていくもの
●設備改善......大型施設等は、省エネ設備機器を導入していくこと
になります。
このように順を追って進めていくのが、大きな施設や企業では大切です。企業の担当部署の方から469maランド事務局に寄せられるコメントを拝見しますと、
「いろんなメーカーが売り込みに来るけれど、どれを使っていいかわからない」
「メーカーの進めるままに導入して、結果が出なかったらどうしよう」
という声もあります。
省エネ設備は、非常にお金がかかるものがあります。
温暖化対策は必須だけれど、何千万も設備にお金をかけて、省エネ・省CO2に繫がらなかったら、意味がありません。
我々469maランドは、何よりもまず?(運用改善)をお勧めしています。大型の施設には、モニタリングを導入します。このモニタリングは、建物全体でどういうエネルギーを消費しているかを調査します。
それらを踏まえて、この施設には、
「こういう取組みが必要です」
「こういった設備を導入するといいですよ」
「そうした場合、コスト負担はこれくらいで、電気代は年間○○円削減出来ます。CO2は△△削減出来ます」
というアドバイスをしていきます。まさに調達改善、設備改善の取組みになります。
コープおおいたは、役職員皆さんで、こういった取組みを始めています。すでに4月から3回の打合せや、現地調査を経て、第二ステップに進もうとしています。
皆が納得して、施設に適した環境対策を進めていく。これが肝心ですね。
みなさんペットボトルのリサイクルというものを知っていると思います。
リサイクルって環境に優しいですもんね・・・
本当ですか?
リサイクルするためにもたくさんのエネルギーが使われています。だったらそのまま埋め立てちゃったほうが環境に優しいんじゃない?
そんなこと考えたことなかった人も、そう言われると自信と根拠を持ってリサイクル!と言えないんじゃないでしょうか。リサイクルする時に発生する環境負荷と埋め立てることによる環境負荷ってどっちが大きいんだろ・・・
今回は、そんな疑問にヒントを与えてくれるELP(Environmental Load Point)という環境負荷を表す単位について、三回にわたって勉強したいと思います。
ELPを簡単にいうと、
環境に悪影響を及ぼす色々な要因を一つの定規で測るための単位で、二酸化炭素100kgとフロンガス1kgってどっちが環境に悪いの?っといった疑問を解決する万能な単位です。
ちょっとELPを知ってもらったところで、環境負荷のモノサシ、ELP (Environmental Load Point)について、具体的に見ていきましょう。そもそも"環境負荷"ってどんなものがあるのか。例えば、今話題の二酸化炭素も環境負荷の1つで、
それは○○kgと表されます。
しかし、二酸化炭素を削減することが、本当に環境負荷を下げることにつながるのでしょうか。家庭ゴミを燃やさなければ二酸化炭素はでませんが、埋め立てゴミは増えてしまいます。このように、二酸化炭素のみで評価すると、ゴミを埋め立てたほうが環境負荷を下げることになります。
この考えには無理がありますよね?
一方、ELPという単位は、温暖化につながる二酸化炭素という要素だけではなく、下のような9つの項目をひとまとまりに評価することができます。
- エネルギー枯渇
- 地球温暖化
- オゾン層破壊
- 酸性雨
- 資源の消費
- 大気汚染
- 海洋・水質汚染
- 廃棄物処理問題
- 生態系への影響
環境負荷と一言に言ってもこれだけの要素があって、この9つの中にもさらに細かい要素が含まれているわけです。
その中で一つの定規で環境負荷を評価するためには、それぞれの要素の重要性がわからなくてはなりません。
ELPでは、上にある9つの重要性を様々な分野の専門家等によるアンケートにより決定しています。その結果は下の図のようになります。
それぞれの重要性がわかったら、あとは要素をELPにあてはめていくだけで、 普通は比べられないものを比較することができるのです。 具体的にペットボトルの一生(製造から廃棄まで)をELPの視点で見ていきましょう。
この図は、ペットボトルの製造と廃棄での環境負荷を表しています。
一番左のグラフが製造段階までの環境負荷を表し、
真中が埋め立てをした場合を製造から含めたもの、
右のグラフがリサイクル(マテリアルリサイクル100%)をした場合の
製造から含めた環境負荷を示しています。
右側には、ペットボトルのサイクルで発生する様々な環境負荷の要素が挙げられています。
ちなみに、これを先ほど挙げた9つの項目に当てはめてみると・・・
CxHy(炭化水素)、SOx、NOx、→ 大気汚染
CO2 → 地球温暖化
原油 → エネルギー枯渇
廃棄物 → 廃棄物処理問題
BOD・COD → 海洋・水質汚染
という感じになります。
これは、排出される量がそのまま加算されているのではなく、ELPに換算された値が含まれています。
ELPに換算することで、このような物質を量としてではなく、"環境負荷"として同じ目線で比較しているのです。この図から、一目でリサイクルのほうが環境負荷は少ないことがわかりますが、
ELPではその具体的な内容まで判断することができます。
まず、埋め立てでは製造段階でのELPが削減されている要素はなく、逆に「廃棄物」としてのELPが増加しています。
それとは反対に、リサイクルでは製造段階でのELPより減少しています。
これは、リサイクルすることにより、
材料としての原油のELPが回復されたことが大きく影響していることがわかります。
実際、図からは原油の項目がほとんど見えなくなっていることがわかると思います。ELPでは、環境負荷が高いか低いかを判断するだけではなく、具体的に環境負荷の中身を分析することで、どのような行程や材料での環境負荷を低下させることが必要か、処理ではどのような方策を選べばよいか、
等を判断するための手助けにもなってくれるのです。
ELPについて長々と説明してきましたが、
理解しえていただけたでしょうか・・・
今後、環境負荷についてこんな見方がある
ということだけでも覚えておいていただけたらと思います。
みなさん、こんにちは。
今回は、地球温暖化が深刻化している中で、このサイトのシンボルでもあるホッキョクグマはどうなっているのかを見てみましょう。
温暖化が進み、海氷がとけて、ホッキョクグマがエサをとったり、子育てしたりする場所が少なくなり、生息がおびやかされています。解氷時期が1週間早まると、ホッキョクグマの体重は10kg前後減るといわれており、子グマの生存率も低下しています。生きのびるために、となりのもっと大きな氷に移らなければならないホッキョクグマもいます。
しかし、長距離の移動を乗り越えるクマが少なく、ほとんどは死んでしまいます。このため、ホッキョクグマの数は年々減少し、現在米アラスカ州とノルウェー、ロシア、カナダなどに2万から2.5万頭しか生息していないと推定されています。
今年5月14日に、米国はホッキョクグマを米国絶滅危惧種法(ESA)の絶滅する恐れのある種に指定しました。今から温暖化対策を実施していかないと、近い将来、水族館からホッキョクグマの姿は消えてしまうかもしれません。
株式会社早稲田環境研究所
研究員 胡浩(ココウ)