みなさんペットボトルのリサイクルというものを知っていると思います。
リサイクルって環境に優しいですもんね・・・
本当ですか?
リサイクルするためにもたくさんのエネルギーが使われています。だったらそのまま埋め立てちゃったほうが環境に優しいんじゃない?
そんなこと考えたことなかった人も、そう言われると自信と根拠を持ってリサイクル!と言えないんじゃないでしょうか。リサイクルする時に発生する環境負荷と埋め立てることによる環境負荷ってどっちが大きいんだろ・・・
今回は、そんな疑問にヒントを与えてくれるELP(Environmental Load Point)という環境負荷を表す単位について、三回にわたって勉強したいと思います。
ELPを簡単にいうと、
環境に悪影響を及ぼす色々な要因を一つの定規で測るための単位で、二酸化炭素100kgとフロンガス1kgってどっちが環境に悪いの?っといった疑問を解決する万能な単位です。
ちょっとELPを知ってもらったところで、環境負荷のモノサシ、ELP (Environmental Load Point)について、具体的に見ていきましょう。そもそも"環境負荷"ってどんなものがあるのか。例えば、今話題の二酸化炭素も環境負荷の1つで、
それは○○kgと表されます。
しかし、二酸化炭素を削減することが、本当に環境負荷を下げることにつながるのでしょうか。家庭ゴミを燃やさなければ二酸化炭素はでませんが、埋め立てゴミは増えてしまいます。このように、二酸化炭素のみで評価すると、ゴミを埋め立てたほうが環境負荷を下げることになります。
この考えには無理がありますよね?
一方、ELPという単位は、温暖化につながる二酸化炭素という要素だけではなく、下のような9つの項目をひとまとまりに評価することができます。
- エネルギー枯渇
- 地球温暖化
- オゾン層破壊
- 酸性雨
- 資源の消費
- 大気汚染
- 海洋・水質汚染
- 廃棄物処理問題
- 生態系への影響
環境負荷と一言に言ってもこれだけの要素があって、この9つの中にもさらに細かい要素が含まれているわけです。
その中で一つの定規で環境負荷を評価するためには、それぞれの要素の重要性がわからなくてはなりません。
ELPでは、上にある9つの重要性を様々な分野の専門家等によるアンケートにより決定しています。その結果は下の図のようになります。
それぞれの重要性がわかったら、あとは要素をELPにあてはめていくだけで、 普通は比べられないものを比較することができるのです。 具体的にペットボトルの一生(製造から廃棄まで)をELPの視点で見ていきましょう。
この図は、ペットボトルの製造と廃棄での環境負荷を表しています。
一番左のグラフが製造段階までの環境負荷を表し、
真中が埋め立てをした場合を製造から含めたもの、
右のグラフがリサイクル(マテリアルリサイクル100%)をした場合の
製造から含めた環境負荷を示しています。
右側には、ペットボトルのサイクルで発生する様々な環境負荷の要素が挙げられています。
ちなみに、これを先ほど挙げた9つの項目に当てはめてみると・・・
CxHy(炭化水素)、SOx、NOx、→ 大気汚染
CO2 → 地球温暖化
原油 → エネルギー枯渇
廃棄物 → 廃棄物処理問題
BOD・COD → 海洋・水質汚染
という感じになります。
これは、排出される量がそのまま加算されているのではなく、ELPに換算された値が含まれています。
ELPに換算することで、このような物質を量としてではなく、"環境負荷"として同じ目線で比較しているのです。この図から、一目でリサイクルのほうが環境負荷は少ないことがわかりますが、
ELPではその具体的な内容まで判断することができます。
まず、埋め立てでは製造段階でのELPが削減されている要素はなく、逆に「廃棄物」としてのELPが増加しています。
それとは反対に、リサイクルでは製造段階でのELPより減少しています。
これは、リサイクルすることにより、
材料としての原油のELPが回復されたことが大きく影響していることがわかります。
実際、図からは原油の項目がほとんど見えなくなっていることがわかると思います。ELPでは、環境負荷が高いか低いかを判断するだけではなく、具体的に環境負荷の中身を分析することで、どのような行程や材料での環境負荷を低下させることが必要か、処理ではどのような方策を選べばよいか、
等を判断するための手助けにもなってくれるのです。
ELPについて長々と説明してきましたが、
理解しえていただけたでしょうか・・・
今後、環境負荷についてこんな見方がある
ということだけでも覚えておいていただけたらと思います。