Earth Health Club Corporation
ずっと地球とお友だち
個人の皆様 法人の皆様 受験問題に挑戦! 469ma(シロクマ)ランドとは? W-Terminalメンバーオンリー
TOP アドバイス ECOを知る ログイン

「私のヒストリー」第6回 

kojima.jpg

海の想いで その1

 「あそこは、ガー太郎(河童)が住んでいるから、足を引っ張られるぞ」
と、言い伝えられているため池があった。
 疎開先の香川県は神山村の「亀石」と呼ばれているため池だった。もともと「讃岐のため池」と呼ばれるように、雨の少ない瀬戸内海では昔から灌漑用水としてため池がそこら中に作られていた。
 今年の夏も猛暑で、ニュース番組では海辺の家族連れの楽しそうな模様とか映されていたが、私たちの子供の頃は洒落たプールや海水浴場というものは無く、疎開先の近所の池や川で悪童の先輩達に連れられて泳ぎを覚えたものだ。

  あちこちのため池で泳ぎの自信を付け始めると、「あそこはダメ」と言われると逆に泳いでみたいと思うのが、子供ながらの冒険心なのかもしれない。
 
小学校に上がる前の年の五歳の時だった。
 
近所に住む小学校1年から6年までの悪童達と亀石の前にやって来た。その中には、小学一年の私の兄も居た。
 
ガー太郎(河童)が住むという亀石は、すり鉢状態になっており、200メートルはある長さだ。
 
さすがに普段、泳いでいるため池とはスケールが違う。この亀石だけは危ないから泳いじゃいけないと近所のおばさん達から何度も言われるのもわかる気がする。
「泳いでみっか」
 誰かが言った。
「泳ぐか」
 そう言いながらも、みんなガー太郎が居たらどうしようと顔に出ている。でも「ヤダ」と言った途端に「弱虫」のレッテルを貼られてしまう。こういう時の集団心理というのはつくづく怖いものだと思う。
 年長の悪童が先陣を切って亀石に入ると、誰も止めようとは言えず次から次に池の中に飛び込んでいく。
 私はこの中で一番の年下。「怖い」が許される一番のチビである。でも私は兄や先輩達につづいて池に飛び込んだのだ。
 普段泳いでいる池よりも何倍も大きな亀石。
  
仲間の悪童たちも必死だったと思う。誰かが溺れたとしても、自分のことで精一杯でとうてい助けることは無理な状況だ。何泳ぎをしたのか覚えてはいない。ひたすら腕を伸ばし、足を放り投げ、ガー太郎が出ませんように。ガー太郎に足を引っ張られませんようにと、必死に泳いだ。

 そしてやっとたどり着いた反対側。
 私たちは、河童が出ると言われる亀石を征服したのだった。
  
その後、近所の大人たちに呆れられたのを覚えている。大人たちはその無謀さに驚いていた。でも大人たちが驚けば驚くほど、自分のやったことが凄いことなんだと思ったものだった。
  
その当時の昭和23年頃は戦後の復興期だ。
  
日本国中自分たちの生活で精一杯で、大人達は日頃子供たちへ目を配る余裕はなかった。学校にもまだプールなど完備されてなく、子供たちをスイミングスクールへ通わせ健康増進と共に泳ぎを覚えるという豊かな時代ではなく、子供たちは危険と背中合わせながら自然の中で育たざるを得ない時代でもあった。
 そんな時代背景は、大人だけでなく、子供も強くしていくのではないのだろうか。
 従って、人に頼るということをせず、自分の人生は自分で決断し切り開いてゆくものだという私の人生観は、子供の時から自然に身に付いたものではないかと感じている。

早稲田大学 小野田准教授のワンポイントエコ授業
 
みんなで学ぼう!地球で起きてるこんなこと 
 
地球健康クラブ
 
早稲田環境研究所
 
NPO法人469maネット
 
このシロクマランドは早稲田環境研究所と地球健康クラブが共同で運営しております。

Supported by
Earth Health Club Corporation

月別記事