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「私のヒストリー」第9回

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大学生時代 その2

入学式で見た憧れのフォード・フェートン。そしてそれに乗っているのは当時アイドルとして売り出し中の「石田あゆみ」――。

「いいなぁ......」「チクショウ、羨ましい」

 人気アイドル石田あゆみを助手席に乗せ、大学構内でさっそうとハンドルを握っている上級生。私達下級生は垂涎の眼差しで眺めていた。

自動車部の進入部員の多くは、フェートンに乗れると一方的な憧れで入部をしたが、入ってみると運転を許されるのは3年生以上ということを知らされるのには一ヶ月もかからなかった。

下級生達は、ひたすらワックスがけに整備の毎日。私もワックスをかけながら、「必ず乗ってやるぞ」と心の中でつぶやきながら磨いたものだ。

フェートンは、それだけ部にとってステイタスでもあり、貴重なクルマだった。

当時日本国内で動いているのはたったの3台と、上級生に教えてもらったのを覚えている。当然古すぎるクルマなので車検は無いから、学校外の道は走れないから校内のみとなる。

貴重なクルマだからこそ、取材もあちこちあった。

箱根の国道一号線を走らせる時は、仮ナンバーまで取得して準備する。これも部費を稼ぎ出す手段でもあった。まさにフェートンは、老いてますますニーズの高いクルマといえた。

ただ問題なのは、部品である。

とにかく古いクルマだから部品が無い。例えば撮影の時、ブレーキに不安があるとその部品探しに一苦労なのだ。当時千葉の解体屋さんにフォードの解体した部品があると聞くと千葉まで勇んで出かける。けれどそこにあるのは、1930年型よりはるかに新しい車種ばかりで用を足さないことがわかる。そしてまた必死に探し回るということになる。それでもブレーキに関しては、長野の解体屋さんにあることがわかり、フェートンは生き返ったのだ。

現在のように高速鉄道があり、ネットという情報網が完備されていない当時では、それだけ一つの部品を探すのは大変なことだった。

大事なクルマを手間隙掛けて乗る。クルマは一つの文化だと思う。その時代を反映している作品なのではないだろうか。最近では早稲田大学環境総合研究センターと?早稲田環境研究所が中心となり、リサイクル部品の供給側と組んで便利なシステムも完成した。特にリサイクル部品の一つ一つのCO2データまで教えてくれるデータ・バンクが出来上がった。あるものを長く使うということは、非常に良いことだと思う。リサイクルできるものはできるだけリサイクルして使う。私達がフェートンの部品探しに走り回ったように、時代の文化が産んだクルマという作品を長く乗り続ける、そういうものがあっても良いと私は思う。

早稲田大学 小野田准教授のワンポイントエコ授業
 
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