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「根のある暮らし?自分、地元、日本を愛する気持ちから始まるサステナブルな社会」

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◆カーボンオフ・ライフ(低炭素生活)元年

 今年2008年は、時代の転換の年となりましたね。世界規模での食糧危機や石油価格高騰を受け、日本の食糧自給率(39%)や木材自給率(約20%)が大きな問題として認識されるようになりました。そして、食品偽装や食糧自給率の低さは、私達に国産で安全・安心な食品を選ぼうという気持ちを高めさせました。また、地球全体のことでは、気候変動が世界共通の課題です。今年、「京都議定書」が発効し、2012年までに90年度比で6%減らすカウントダウンが始まりました。そして「洞爺湖サミット」では2050年までにCO2の排出量を半減させようという国際的な合意がなされましたことは記憶に新しいところです。CO2半減、そんなことが果たして実現できるのでしょうか?

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今、私達に求められているのは、ライフスタイルを環境負荷の少ないものに変え、あらゆるビジネスや技術、学問や政策が低炭素社会を実現させるものに変わっていくことです。また、私達自身がどんな地域や社会、地球をつくっていきたいのか、そのビジョンを改めて考え、そのイメージを脳裏に焼き付けることです。

低炭素でステナブルな社会を実現するための、これからのライフスタイルを考えるときにLOHAS(ロハス)という言葉が私には大きなヒントを与えてくれました。アメリカで生まれた言葉ですが、今ではすっかり日本でもおなじみになり、昨年からは台湾・韓国・中国でも注目されています。ロハスとは、"人と地域社会と地球の健康を指向するライフスタイル"です。自分や家族、地域を大切に思うことから、それは始まります。そして、日本のロハスな人たちは、日本に昔から根付いてきた考え方や生活文化

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の価値を再認識し、改めて暮らしに取り入れていきたいと思っています。例えば、地域の人々が互いに助け合い、四季に寄り添い、田畑を耕し、自然を大切にする暮らし方とか。数十年前まで日本全国に当たり前のものとして存在していた暮らしぶりです。 


 

◆     根のある暮らしとは

 それが、今では各地に何千という"限界集落"(※)と呼ばれるエリアができ、かつて栄えた集落が過疎化・高齢化し消えつつあります。国土の2/3を占める森林も手入れがなされず、荒廃している山が少なくありません。しかし、一方でそれは多くの遊休耕作地や未活用の森林が存在することでもあり、湧水や河川などの水、温泉などもあり、豊富な自然資源が日本にはあるとも言えるのです。遊休耕作地をもう一回開墾し作物を植え、森林に手を入れ活用することで、食糧、エネルギー、木材も地産地消で自給することが可能になるかもしれません。

私は最近、各地の小さなまち・むらに暮らし、自然と寄り添い、地域の特徴を大切にしながら仕事や事業をつくりだし、新しい社会を創っていこうと活動を始めている人たちに出会いました。そういう人たちを私は「根のある暮らしをしている人たち」と呼びたいと思います。彼らの暮らしも仕事も環境負荷の少ないもので、高度成長社会や経済一辺倒の社会がもたらした物質・消費偏重社会を脱し、新しい豊かさ、幸せとは何かを模索しています。地域の一員として自然や景観や周りの人を大切にし、地域が元気になるような活動・事業を行い、結果としてカーボンオフ(CO2排出量を減らす)で、ゆとりある心豊かで持続可能な社会の小さな小さなモデルが、点在しているのです。

 

「根のある暮らし」。私はこの言葉を世界遺産、石見銀山(島根県大田市大森町)に暮らす松場登美さん(石見銀山生活文化研究所所長)から教えていただきました。田舎暮らしという心豊かな暮らしを人口430人という小さな町から発信しています。230年前に作られた武家屋敷「阿部家」など、人が住まなくなって久しく崩れかけていた

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古い家を改修し、自らそこに暮らすことで再び命を吹き込み蘇らせています。竈(かまど)のある阿部家の台所には、国内のみならず世界から人が松場登美さんと語り合いたい、その空間での暮らしを体験したい、と訪ねてきた人が集います。松場登美さんは「根のあるくらしとは、すべてを捨て、すべてを新しくするのではなく、古いものを活かしながら新しいものをつくること」と言います。廃校になった小学校の階段に使われていた板を活用したテーブルをはじめ、改修に使われた材木や建材や他で不要になったもの、捨てられていたものを大いに再利用しています。 


 

 

 

そして、その暮らしから生まれた雑貨、服、寝具を、「群言堂」名付けたお店で販売しています。こちらも、大森町の通りに面した、江戸後期、弘化4年(1847年)に建てられた商家を改修したものでした。中庭には野山の花の咲く中庭や、カフェもあります。2階では、様々なイベントが開かれてきたそうですが、今年3月からは「根のある暮らし」をテーマとした展示会が行われています。登美さんの二女で「根根」というブランドの責任者をしている由紀子さんがプロデュースをしました。 

展示の内容は、自分たちにとっての根、つまり大森の町と自分のかかわりを再発見しようと同級生や町の同世代の人たち20人に「この町で暮らす理由」「この町で暮らす役割」「この町で暮らす幸せ」を書いてもらった直筆の紙と顔写真を展示しています。職業も農林水産業から、教員、寺の住職、群言

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堂の社員まで多種多様です。部屋の中央には、根のついた木が吊り下げられています。来場者は自問自答し、小さな紙に自分にとっての"根"を一言書き、御神木のような木に紐で結び付けていきます。何千枚という小さな紙が結び付けられていました。あなたにとって"根"はどこにありますか?どんなものですか?どうやって根を地中深く、広げていっていますか? 


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今回から始まるこのコラム「根のある暮らし」では、この松場登美さんのように、日本各地で根のある暮らしをし、その古くて新しいライフスタイルを通じて、サステナブルな社会をつくりつつある人々の物語を紹介していきたいと思います。初回の今日は、このコラムに寄せる想いを書かせていただきました。近々、最初の物語「大分県竹田市」の根のある暮らしぶりをお届けいたします。登美さんのお話も、いずれまた詳しく。

 

2008年7月25日

大和田順子(NPO環境立国 理事/LBA共同代表)