みなさんはもう新そばを食べましたか。一般に新そばといわれるものは秋に出回るそばのことをいいます。日本列島は南北に長く気候が異なるため、北から南へ、9月中旬?12月中旬にかけて新そばが作られます。
新そばの魅力はなんといってもその豊かな香り。そば屋さんの店先で「新そば」の張り紙を見て、フラフラと誘われるように暖簾をくぐってしまうのは、きっと私だけではないでしょう。各地で行われる新そば祭りに行ってみるのも楽しいですね。
そばの魅力はもうひとつ、おいしいだけでなくとても栄養価が高いこと。昔の修験者や行者は山中での修行の際、腰にそば粉を入れた袋をぶら下げて、水で練って食べたそうです。またそば粉を練ったものに、梅干をすり入れた丸薬を持ち歩いたといわれています。
このようにそばの栄養価の高さは、古くから経験によって知られていたのです。栄養価が高い最大の理由は、精製しないで全粒として利用することでしょう。米・小麦などほとんどの穀類が、精製することで栄養豊富な胚芽の部分を取り除いてしまっているのです。
ではそばにはどんな栄養があるかをみてみましょう。まず身体の発育に大切なリジンやスタミナ源として注目されているアルギニンなどの必須アミノ酸が豊富です。この必須アミノ酸は、人間の生命維持や成長になくてはならないものですが、体内で作ることはできず、食品によってのみ摂取することかできます。特に成長期のお子さんには、心掛けて摂ってもらいたいですね。
またそばは良質のたんぱく質も豊富で、小麦の倍以上もあります。さらにビタミンB群が多く、中でもビタミンB1、B2は精白米の4倍も含まれています。B1は体力の低下やイライラ、食欲不振の解消に効果的。B2は皮膚や粘膜を健康に保つために欠かせません。最近イライラすると感じたり、息切れしたり疲れやすいと感じたら、そばがおすすめです。
そしてそばの栄養価の中でも特に注目したいのがルチン。穀類でルチンを含んでいるのは、実はそばだけです。ルチンはポリフェノールの一種で、毛細血管の強化や血圧を下げる効果があります。
さらに脾臓機能の活性化、記憶力の強化も促してくれます。ただしルチンは水溶性のため、そばをゆでている間に湯の中に溶け出してしまいます。そばの締めにルチンが溶け出たそば湯をいただくのは、理にかなっているのですね。
もうひとつ、お酒が好きな人にうれしいのは、そばに含まれるコリンという成分。肝臓の働きを促進し、飲酒によって肝臓に脂肪がたまるのを防いでくれます。お酒を飲む時にはそば。ただし飲み過ぎはいけませんよ。
レシピ「そばの実雑炊」
日本では古くから、そばの実を石臼で製粉してそば粉を作り、そばがきや麺として食べてきました。そばの実をそのままの形状で食べるのは四国や東北部の一部の山麓地帯だったようです。ところが最近の雑穀ブームで、このそばの実が見直され、自然食レストランなどでも様々な料理に使用されています。外側はプチプチ、中はふんわり、蕎麦の香りも堪能できます。そば屋さんのおつまみの定番「そば味噌」をはじめ、リゾットやサラダなど洋風のアレンジもできますよ。
今回は、そばの実料理初心者でも簡単にできる「そばの実雑炊」を作ります。ルチンの溶け出たスープもいただくので、そばの栄養を丸ごと摂ることができます。具材は家にあるものを活用できます。きのこや里芋、豆腐などを入れて具だくさんのけんちん汁風にしてもいいですね。
[材料約3?4人分)]
そばの実(黒い皮を剥いたもの、そば米)...80g
昆布のだし汁...800ml
ごぼう...1/2本
にんじん...1/2本
しめじ...1房(1袋)
三つ葉...適量
酒...大さじ1
塩...少々
しょうゆ...大さじ1
[作り方]
フライパンでそばの実を弱火でこげないように軽く炒ってから、鍋に移し昆布のだし汁を注ぎ10分ほど煮る。
酒とささがきにしたごぼう、いちょう切りにしたにんじんを入れ、ごぼうとにんじんに火が通るまで煮る。途中アクが出たらすくい取る。
石づきを取り小房に分けたしめじを加え、塩、しょうゆで味付けしてひと煮立ちさせる。
器に盛り、三つ葉を飾る。
黒い皮を剥いたそばの実はそば米ともいわれています。ぜひ国産新そばの実を使ってください
はじめにフライパンで軽く炒ると香ばしさが増します
温かい雑炊はこれからの寒い季節にぴったりですね
そばの実がふんわり。消化がいいので朝食にもおすすめです