◆"限界集落"を再生させるNPO
2008年の今年も沢山の方との出会いがありました。その中でも、とっても興味を持ったのが、住まいを都会から田舎に移し、田舎を拠点に都市と農山村の交流事業を行っている40代の男性や、20代で「半農半X」という暮らし方を始めている女性や、50代で家族で夫の故郷に移住して新規就農したという女性でした。
そのうちの一人、"都市農山村交流事業"を山梨県北杜市須玉町の限界集落"増富"地区で展開している「NPOえがおつなげて」(http://www.npo-egao.net/)の活動を今日はご紹介いたしましょう。
代表の曽根原久司さんは現在46歳。かつては東京で経営コンサルタントをしていましたが、今から13年前、バブルがはじけた時、「これから時代は大きく変わる」と考え、自ら山梨県北杜市白州町に夫婦で移住しました。無農薬で自給用の米や野菜をつくるだけでなく、地域の別荘族に薪を宅配したり、都市に住んでいる人の農山村体験を事業するなど仕事を創っていきました。そして、今から5年前、活動の拠点を"増富"地区に移しました。
日本百名山「瑞牆山」。かつては水晶の産地だった
限界集落"聞いたことありますか? それは、過疎と高齢化で存続が危ぶまれている集落で、65歳以上の高齢者が住民の50%以上で、冠婚葬祭など社会行事の維持が困難になっている集落のことです。そこには、耕作を放棄されている農地や空き家が沢山あります。国土交通省の調査によると2006年4月時点で全国で約7,900あり、2,641集落は今後、消滅の可能性が高いとも予測されています。日本各地にこうした集落があるということです。あなたの住んでいる近く、あるいは故郷がそんな状況になっているかもしれません。
その限界集落の一つである"増富"地区。秩父連山の西端に位置する標高2,230mの花崗岩山である日本百名山の「瑞牆山」の麓、標高1100メートルの地域に広がる山里です。都会から農業ボランティアを募り、遊休農地の開墾をしたり、親子を対象とした農業&田舎体験プログラムを行ったり、和菓子屋さんや洋菓子屋さん、八百屋さんの畑もあります。無農薬で無化学肥料です。最近では企業のCSR活動も始まり、社員とその家族が農業体験にやってきます。その結果、ナント3haの遊休農地が再生したのです。面白い活動だと思いませんか? すっかり彼らの活動に興味を持ち、今年、5回も現地に足を運びました。電車とバスを乗り継いで......
◆安全な食、豊かな農山村・自然は私たちが守る
この限界集落「増富」で、今年、三菱地所がCSR活動を始めたと聞き、CSR推進部の寺坂琴美さんにお話をうかがいました。寺坂さんはCSRの部署に異動して2年半。5歳と8歳のお子さんを持つワーキングマザーです。一年ほど前、次のCSR活動は"都市農山村交流"をと考え、NPOえがおつなげての活動を知り、現地に足を運び、そこで活動することを決めたと言います。個人でも親子で参加できる「こどもファーム」という、自分達で植えた無農薬・在来種の大豆から、味噌づくりをするプログラムに参加しました。「参加して改めて、スーパーで安く売られている農作物や加工品に疑問を感じるようになりました」と。
種継ぎされてきた地大豆。紫の花をつけ、大豆は青い。
確かに今年も食品に関する事故が相次ぎましたね。また、世界的な食糧不足から、小麦や様々な輸入食材が高騰しました。日本の食糧自給率は40%と先進国の中でも最も低いということはご存知かと思います。東京などたったの1%です。一方で各地に放棄されている農地が沢山あるわけです。
新しい年に向けて、私からの提案は、「自分たちの安全な食、豊かな農山村、自然は私たちが行動することで守ることができる」ということです。私たちの暮らし方や、買い物の仕方、商品の選び方で、日本の地域を元気にすることができる、持続可能な社会を創ることができるのではないでしょうか。そのために、
・農山村訪問や田舎具暮らしを通じて、自然を感じると共に、農山村の現状に関心を持つ
・毎日の買い物で、国産の、地域の農産物を選ぶようにする
・農産物生産者や農山村を支援する組織に入会する
各地にも「NPOえがおつなげて」が行っているような"都市農山村交流活動"があると思います。サステナブルな小さな村づくりにチャレンジしている集落を探して、ぜひ応援して下さいね。それに、田舎には美味しいモノが実は沢山あります。季節の旬の食材を活かしたお料理はもちろん、空気も水も美味しいですね。
季節の旬のものをいただく"箱膳"。玄米菜食。滋味深い