前回のオクラに引き続き、今回も夏においしい緑の濃い野菜をお届けします。熱帯アジア出身の「ゴーヤー」の登場です。ゴーヤーチャンプルーを作るというご家庭も多いでしょう。そのくらいゴーヤーは馴染みの野菜になりましたが、日本各地で栽培・販売されるようになったのはここ10年ほど。それまでは沖縄の地方野菜でした。どうやらNHKドラマの「ちゅらさん」がゴーヤー人気に火をつけたようです。
正式名は「ツルレイシ(蔓茘枝)」または「ニガウリ(苦瓜)」。沖縄本島では「ゴーヤー」、宮古島では「ゴーラー」、八重山地方では「ゴーヤ」、九州では「レイシ」「ニガゴリ、ニガゴイ」などとよばれていて、沖縄地方の呼び名が、一般に広まったのですね。
外見の特徴は濃い緑とイボイボ。私は始めて見た時、触るのもおっかなびっくりで、「こんな野菜がおいしいわけがない」と思いましたが、今ではすっかり虜です。虜にしたのはシャキッとした歯ごたえの後に感じる強い苦味。爽快な苦さで、食べた後は口中がスッキリ。潔ささえ感じます。しかもゴーヤーを食べると、ムクムクと元気がわいてくるようなのです。夏になって「今年もいろいろな料理にしてたくさん食べるぞ」と思っただけでもパワーが出る感じ。
これにはちゃんと理由があって、ゴーヤーには、ビタミンCをはじめとするミネラルが多く、夏バテ予防や食欲増進に効果があるからです。ゴーヤー1本につき、レモン約2個分、ほうれん草の約2倍に相当するビタミンCが含まれています。ゴーヤーのビタミンCは熱を加えても、壊れにくいのというのも特徴。しかもビタミンCを豊富に含む野菜は、動物性食品と一緒に組み合わせると、さらに抗酸化力がアップするという性質があります。ゴーヤーを肉と一緒に炒めるゴーヤーチャンプルーは、まさしく沖縄の人たちが考え出した「暑さに負けない料理」なのですね。
苦味の成分は「モモルデシン」や「チャランチン」というもの。これには血糖値や血圧、コレステロールを下げる効果があります。海外でも多くの臨床試験が行われ、その結果ゴーヤーが特に糖尿病に有効であることが報告されています。
ゴーヤーを選ぶときは、緑が濃く色が均一のものがおすすめです。イボイボがしっかりとあるものがおいしい証拠。イボイボの先がつぶれていたり、黒くなっているものは避けましょう。
さて、体のためにゴーヤーを食べたいけれど、どうしてもあの苦さが好きではないという人もいるでしょう。そんな人は薄くスライスして塩もみをすれば、苦味は和らぎます。ぜひお試しを。
レシピ「ゴーヤーとエシャレットのポン酢あえ」
夏向きのさっぱりとしたあえものを作りましょう。沖縄野菜の島らっきょうが手に入れば、エシャレットの代わりに使うと、さらに沖縄料理らしさがアップ。エシャレットも島らっきょうも早採りのらっきょうですが、島らっきょうのほうが辛みが少なく、味がマイルドです。
作ってすぐに食べれば、ゴーヤーのシャキッとした食感と、ほどよい苦味が楽しめます。冷蔵庫に保存して翌日食べれば、ポン酢が染みてゴーヤーが少ししんなりし、苦味もマイルドになって食べやすくなります。どちらもおいしいので、たっぷり作って2日に分けて、味の変化を楽しんでください。今までゴーヤーもエシャレットも苦手だったという人でも、意外に食べられるかもしれません。
[材料]
ゴーヤー...1/2本
エシャレット...1束
ポン酢...大さじ1
鰹の削り節(粗削りの場合は細かく刻む)...適量
[作り方]
1. ゴーヤーは縦に2等分に切り、白いワタと種の部分をスプーンで削ぎ取り、3?程度の薄切りにする。
2. エシャレットは根と葉の緑の部分を切り落とし、白い部分を小口切りにする。
3. 1のゴーヤーを熱湯で30秒ほどさっとゆでる。冷水に取った後、軽くしぼって水気を取る。
4. ボウルに2のエシャレット、3のゴーヤーを入れ、ポン酢をかけてよくあえる。
5. 器に盛り、鰹の削り節をかける。
(ゴーヤ)
緑が濃く、ずっしりと重たいものがおいしい証拠
(ワタをスプーンで取る)
このようにスプーンで削ぎ取るとラクです
(ワタを取った後)
ワタをしっかりかき取るのがポイント。苦味が和らぎ、食感もよくなります
(切った後)
ゴーヤーとエシャレットの切り方はこの写真を参考にしてください
(ゆでてあえる)
ゆでたゴーヤーと小口切りのエシャレット。ここにポン酢をかけてよくあえます
(キャプション6 完成)
あえたばかりのゴーヤーはきれいな薄緑色。翌日には味がしみて薄茶色になります