今年は、あちこちに種蒔きや植樹に行ったことは前回(9回)書きました。日本の食料自給率が40%と先進国の中でも最も低いことについては危機感を持つ人が増えて、個人でも野菜を育てよう、という人も増えているようですね。(私もその一人ですが)
では、木材はどうでしょう?日本は国土の7割が森林で、これは世界有数です。ということは木材の自給率は高い!?と思い調べて見てビックリ。なんと、木材自給率は20%前後と食料よりさらに低い。1960年代頃は90%以上あった木材自給率は、64年の木材輸入自由化を境に低下の一途をたどって20%程度まで下がってしまった。つまり8割は輸入しているということです。
森林には、材木そのものの価値だけでなく、水源涵養や生物多様性などの価値もあります。森の中を歩くとセラピー効果もあるし。しかし、輸入木材に押されて山林の経済価値が下がった結果、森林の成長に応じて木を間引く「間伐」さえ十分にできない状態になってしまっているのです。日の入らない、うっそうとした間伐されない森にはヒョロヒョロの木が多く、根が浅く、表土も薄く、大雨が降ると倒れて土砂崩れを起こす山も少なくありません。
こんなことでは大変!と近年、森林を活用する様々な事業が行われるようになってきました。前回、事例として書いた森林ファンドのように、個人から小口で資金を集めて森を再生しようという動きもあります。また、森林酪農といって、森の中で牛を放牧し、搾乳した乳からアイスクリームや牛乳を商品化して販売するところも出てきました。
山梨県西沢渓谷。森林セラピー基地に認定
森を再生させたい。もっと木を
そんな中、注目している団体があります。間伐材を活かした家具や雑貨作り、森林を訪ねるグリーンツアーや、森由来のカーボンオフセット事業などを手がける「more trees(モアツリーズ)」です。
モアツリーズの代表は坂本龍一さんです。海外出張の多い坂本さんは、飛行機によるCO2の排出を色々なカーボンオフセットサービスを利用してオフセットしてきたそうです。また、古来より森を失った文明は全て滅びたという歴史に学び、文明を支え、CO2を吸収してくれる木を大切にし、世界各地の森を再生させたいとの思いから活動を発案したそうです。
まずは、2008年3月、高知県檮原(ゆすはら)村で森づくり事業が開始しました。檮原村は、高知県の西部に位置し、人口約4,000人、森林が91%(うち杉を中心とした人工林が75%)を占める林業の町です。檮原村森林組合は2000年10月に日本で二番目のFSC認証を取得しています。森が吸収するCO2を定量化し、第三者機関による評価を経てカーボンオフセット用のクレジット(排出権)を創出しています。
事務局長の水谷伸吉さんは"地域とつながる3つのステップ"があると言います。1つめが「空気でつながる」。すなわちカーボンオフセット。森林の空気感が肌感覚で伝わることが、森への関心のきっかけになるといいます。2つめが「モノでつながる」で、間伐材グッズなど。著名な工業デザイナーである深澤直人さんデザインのベンチやステーショナリーなどグッズを開発・販売しています。そして3つめが「現地とのつながり」で、エコツーリズムなどで現地を訪問し、地域の人と交流し、森や自然に触れるというものです。
再生材で作られた。10%が寄付される
飲料水も水源を気にしたい
私が住んでいる小田急線沿線では、小田急電鉄が今年5月に「箱根の森から」というペットボトル入りの水の販売を始めました。沿線住民にとっては、箱根の森が線路の先にある・・・というイメージはありましたが、この水を飲むたびに箱根の森の印象が強くなってきます。1本買うと1円が箱根の森に寄付されることにもなっています。ポスターには「あなたが飲むと、森がうるおう」というコピーがついていました。同じ水を買って飲むなら誰かの、何かの役に立ちたいですものね。わたしが潤うと、森も潤うわけですね。
ということで、水を買うときにはその採水地や、どんな社会貢献のしくみが付いているか、ぜひボトルをぐるりと見てみてください。また、家具や木製品を買うときには、国産かどうかもチェックしてみてください。私たちが森の恵みを暮しに取り入れることで、森を少しでも元気にすることができる!と思うからです。
※モアツリーズ http://www.more-trees.org/more-trees/introduction.html
※箱根の森から http://www.odakyu.jp/water/index.html