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2009年8月アーカイブ

今月のクローズアップ食材「寒天」

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 みなさん、夏バテが残っていませんか。私はまるで子供のようで情けないのですが、夏の間冷たいものを食べたり飲んだりし過ぎたのか、お腹の調子が不安定。この時期は夏の疲れが胃腸にくる季節でもありますね。そんな時、お腹の調子をコントロールしてくれるのが「寒天」です。寒天料理は透明感があって涼しげで、まだまだ暑い季節に合う食材です。

 寒天の原料には天草とオゴノリといった「紅藻」と呼ばれる海草が使われていて、寒天になるまでには多くの時間と手間がかかっています。まず海草の不純物を取り除いて、何日もかけて清水にさらして塩気やアクを抜きます。そして大きな釜で混ぜながら煮ていき、海草を搾って寒天液を抽出し、モロブタという木型に流し入れ、冷やして固めたのが「ところてん」です。これをところてん突きなどで細く整形したものが糸(細)寒天に、長四角形に切ったものが角(棒)寒天になります。

 12?2月に戸外の干し場に並べ、夜間は凍結させ、10日〜2週間もかけて日中に融解、乾燥を繰り返すうちに寒天になるのです。雨や雪で濡れないよう、注意深く作られていく寒天。日本ならではの気候から生まれた寒天を、私たちは大事にいただき、いつまでも守っていきたいものです。

 ただしこれは天然寒天の製法で、天日を利用せず機械を使って大量生産する「工業寒天」もあります。角寒天と糸寒天のほとんどが天然寒天で、粉末寒天には工業寒天が多いようです。

 

 驚くことにこの寒天は、食品の食物繊維含有率1位なのだそうです。ご存知のとおり、植物繊維は腸の健康に欠かせません。食物繊維には不溶性と水溶性の2種類があり、100%海草の寒天は、水溶性植物繊維を大量に含んでいます。水溶性植物繊維の特徴は、まず腸内の善玉菌を増やしてくれること。善玉菌が減って悪玉菌が増えてしまうと、腸の活動が鈍くなり、様々な病気を引き起こすため、善玉菌を増やしていくことは大切です。

 また水溶性植物繊維は、腸の中で溶けて食べたもののカスをからめ取り、腸を掃除してくれます。さらに寒天はカルシウムやミネラル、鉄分などもありながら、なんとカロリーはほぼゼロ! たくさん食べても太る心配はありません。

 そういえば2年くらい前、ダイエット食材として寒天がブームになり、店頭では品切れ続出だったのをみなさんは覚えているでしょうか。手間をかけて乾燥させて作られた寒天は、家庭で再び戻し、料理をしなくてはいけないというまさにスローフード。ブームのときは一生懸命食べていたけれど、面倒になってすっかり「寒天離れ」してしまった人もいるのでは? ダイエットだけでなく寒天の健康効果をもう一度見直して、様々な料理に活用してみてはいかがでしょうか。

                 レシピ「蟹と野菜の寒天寄せ」

 寒天はツルンとしているけれどちょっとコリッとした、ゼラチンで作るゼリーとは異なる独特の食感が特徴です。寒天を使った料理でまず思い浮かべるのは、みつ豆ではないでしょうか。その他にも使い道はいろいろあります。お子さんには牛乳かんなどを作ってあげると安全安心なおやつに。健康のために寒天を食べたいけれど、手間がかかるという人は、炊飯のときに寒天をちぎって加えるだけでもOK。わざわざ戻す必要がなく、ごはんはツヤツヤ、植物繊維も摂れます。  

 

 さて、今回は寒天寄せを作ってみました。意外に簡単に作れるのに彩りがきれいで、豪華に見えるので、おもてなし料理にもおすすめです。

[材料 約8人前]
角(棒)寒天...1本
枝豆(さや付き)...70g
しいたけ...4枚
にんじん...30g
蟹身...50g
だし汁(鰹と昆布)...500ml
酒...大さじ1
しょうゆ...小さじ2
塩...少々

[作り方]
1. 寒天は水洗いして3?4時間、たっぷりの水に浸しておく。
2. 1の寒天を固くしぼり、細かくちぎって鍋に入れる。だし汁を注ぎ火にかけて、酒を入れてかき混ぜながらしっかりと溶かす。あくが出たらすくっておく。しょうゆ、塩で調味する。
3. 枝豆はゆでてさやから取り出し、にんじん、しいたけは千切りにしてさっと下ゆでする。蟹身はほぐしておく。
4. 2を水にぬらした型や密閉容器に注ぎ枝豆、にんじん、しいたけ、蟹身をバランスよく入れていく。だし汁が固まってきていたら、再び火にかけて液状にすること。
5. 粗熱が取れたら冷蔵庫に入れて冷やし固める。
6. 型から取り出し、好みの大きさに切って皿に盛り付ける。

 

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                          (角寒天)
         2本入りで販売されていることが多いです。今回は1本を使います

 

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                   (固く絞って千切る)
      水に戻して絞ってから千切ります。寒天がプニュプニュと柔らかく、楽しい作業

 

 

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                        (下ゆでした野菜)
ごぼうや竹の子、いんげんなど、様々な野菜で応用できます。
残り野菜を有効に使いましょう


 

 

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                   (密閉容器に入れる)
       型があるとよりきれいにできますが、今回は手軽な密閉容器を使いました


 

 

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                         (完成)
     いちばんのクライマックスはカットして断面を見るとき。きれいだとちょっとうれしい!

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    最近、「生物多様性」という言葉を見聞きしませんか?来年10月に、生物多様性条約第10回目締約国会議(COP10)が愛知・名古屋で開催されます。それに向けて各界で徐々に関心が高まっているところです。

   身近にこの「生物多様性」を感じることができるのが、田んぼの生きもの、植物調べです。夏休みに入り、田舎に帰省する人も多いと思います。そんなとき、田んぼ、できれば無農薬・無化学肥料で稲を育てているところが良いですが、ぜひ訪ねてみてください。生物多様性とは虫や野草など"生きものの賑わい"のことなんですね。

   私は、7月中旬、長野県飯島町の「アグリネイチャーいいじま」で開催された2泊3日の「アグリ・ネイチャー・スチュワードシップ養成ビジネススクール」という研修に参加して、田んぼの生きもの・植物調べを体験してきました。
アグリネイチャーとは"農業自然"で、スチュワードシップとは"番人"という意味です。


   まず、長野県飯島町がどんなところかご紹介しましょう。飯島町は長野県の南部、伊那谷のほぼ中央に位置し、西に中央アルプス南駒ケ岳を仰ぎ、東には仙丈岳を中心に南アルプス連山を遠望する人口約1万1千人の田園地域です。

   飯島町へは中央自動車道、JR飯田線などで東京から約3時間、名古屋からは2時間ほど。

  

   飯島町には1000ha農地がありますが、"持続可能な農場"として4つの法人によって運営されています。7月中旬は、色々な野草が花をつけ、田畑には稲や黄金千貫(こがねせんがん)という焼酎の原料になる芋の苗も青々としていました。果樹園では栗の花が終わり、小さな実をつけ始め、ブルーベリーが実りの時期を迎えていました。

                 ※レポート http://soratsuchi.com/owada/2009/05/npo.html

 

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                            アルプスに囲まれた田園地帯(松木洋一先生撮影)

 

◆田んぼの生きものは賑やかで

   「田んぼの生きもの調査」を指導して下さったのは宇根豊さん。福岡でNPO法人「農と自然の研究所」の代表理事を務めています。元々は農業改良普及員で、1978年より「減農薬運動」を進めてこられた。『田んぼの学校』や『「百姓仕事」が自然を作る 2400年目の赤とんぼ』といった本の著者でもあります。

   全員で20分ほど、田んぼに入り、色々な生きものを発見しました。裸足で、ゆっくり歩いて、水中や水面、稲もじっくり眺めて生きものを探します。男性の参加者は子供時代に還ったように、ワイワイやっていましたが、私も大いに楽しみました。

田んぼの100?の範囲に25種類の生きものがいました!その一部の名前を紹介すると、

【害虫】稲水象虫、稲ツト虫、イナゴ など5種類
【益虫】、秋アカネ 殿様ガエル、菊月子守グモ など10種類
【ただの虫】コオイムシ(子負い虫)、ミズカマキリ、チビゲンゴロウ、ミジンコなど10種類

 

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                                               ただの虫 ミズカマキリ

 

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                               ただの虫 コオイムシ。  卵を背中にしょってますね

  

   この三つ目の分類の"ただの虫"が重要なんだそうです。害虫や益虫は稲にとって害か益かという視点で分けているので、いうなれば稲作への"有用性"で害か益かのラベルを貼っているわけです。そして、"ただの虫"は薬にも毒にもならないもので、これこそが、生物多様性、その自然の豊かさを物語っているのです。

   生きものの種類を数え終わったら、「また会おうね」と声をかけて、田んぼに返してあげます。人に別れを告げるときと同じです。「See you again. また会おうね

◆畔や湿地にも沢山の野草が

   続いて今日は、田んぼや畔を歩き野草を観察しました。講師は神戸大学の伊藤一幸先生です。私は野山を歩いていると、食べられるかどうかという眼で野草を見てしまうのですが、この見方は決して間違いではありませんでした(笑)。伊藤先生も「まずはそれが関心を寄せる第一歩。私も野草を食べるセミナーなどよく開催していますよ」とのこと。たんぽぽの根、よもぎ、タウコギなども食べられます

  

   田んぼの中にはクログワイやイヌホタルイなど、いわゆる雑草と呼ばれて草取りされるものですが、オモダカや水生植物として観賞用に良さそうなものも色々ありました。農家にとっては雑草取りが大変なのですが、農薬をまいても、それに耐性ができてしまうものもあり、水深を深くするとか、タイヤチェーンを引いて歩くとか、農薬を使わない色々な除草技術が活用されているそうです。

 

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                              雑草オモダカ。白い可憐な花をつける

    畔の近くの湿地帯にはミクリという絶滅危惧種の珍しい野草もありました。飯島町は生態系が豊かです。

 

 

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                                               ミクリ

  そして、アグリネイチャーいいじまの敷地内にあるビオトープにはハッチョウトンボという1円玉位の大きさの赤いトンボも飛び始めていました。

 

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                                                      ハッチョウトンボ

田んぼは色々な虫や植物など生きものが棲息する場所なんですね。ぜひ、田んぼの草取りと、生きもの調べに行ってみてくださいね。