今月は、郷土食をピックアップしてみました。食欲が落ちたときでもツルッとおいしく食べられる宮城県の白石地区で作られている白石温麺(しろいしうーめん)です。ひやむぎのような白い麺で、大きな特徴は長さ10cmくらいと短いこと。その理由を探ってみましょう。
宮城県白石市は伊達政宗の重臣、片倉小十郎景綱(かたくらこじゅうろうかげつな)公の城下町として栄えた歴史があります。俳人松尾芭蕉が奥の細道をたどった元禄年間の物語に、このようなものがあります。
「今から400年ほど前の昔、白石城下に鈴木右ェ門という人がいました。右ェ門の父は胃を病んで床に伏し、何日も絶食しなければなりませんでした。右ェ門は大変心配し、何かよい食餌療法はないかと八方手を尽くしていたところ、旅の僧から油を一切使わない麺の製法を教わりました。さっそくそれを造り、温めて父にすすめたところ、父は快方に向かい、やがて全快したということです。
小麦粉を塩水でこねて造るため、舌ざわりがよく消化もよく、胃にやさしいため回復を早めたのでしょう。この親孝行の話が時の殿様に伝わり、献上したところ、親への温情心を讃えられ「温麺」の称が与えられました。その後、近隣からも所望され、後に白石特産品として製造されるようになりました(参考 奥州白石温麺協同組合)」
蔵王を水源とする白石川が白石の街中を流れているため、きれいな水が豊富というのも、温麺づくりが盛んになった一因だといいます。私はこの話を知るまで、「温麺」が「温かくして食べる麺」のことだと思っていたのですが、「親思いの温かい心から生まれた麺」という意味だと知ると、ますますこの麺が好きになりました。
確かに白石温麺は、胃腸が弱っている人に食べてもらいたい麺なのです。素麺は作るときは油を使いますが、白石温麺は油を使っていないので胃への負担が軽減されます。しかも他の麺よりも短いので、体力を消耗している人にも食べやすいのです。病気の人だけでなく、麺をすするのにまだ慣れていないお子さんにも向いていると思いませんか。
白石市に行くと、街のあちこちで白石温麺が食べられます。東北新幹線の「白石蔵王駅」には展示場もあり、白石温麺もお手ごろな価格で食べられます。地元では冷やしてくるみやゴマのつけつゆで食べたり、温かくして野菜たっぷりのけんちん汁で食べたりするそうです。冷やし中華やサラダ麺のように、様々な具材を乗せてかけ汁をかけて食べてもおいしそうですね。
白石温麺は、宮城県以外でもデパートや大きなスーパー、宮城県のアンテナショップ、ネット通販でも購入可能です。ぜひお試しを。
レシピ「なすときのこたっぷり温麺」
旬のなすときのこを使って、温かい温麺を作りましょう。ごま油でじっくり炒めればコクもしっかり。白石温麺はゆで時間が短いので、手軽に作れるのも魅力です。レシピの材料に載せているものの他、えのきだけやなめこなどもおすすめ。大根、にんじん、ごぼうなどの根菜を入れて具だくさんにしてもいいですね。
食べ物がおいしくなる秋になりました。夏バテで落ちてしまった食欲を取り戻そうと食べ過ぎると胃腸が疲れてしまいます。時にはこんなメニューで、胃腸を休ませてあげてください。
[材料 2人前]
白石温麺...2束(200g)
しいたけ3枚
まいたけ...1/2パック
しめじ...1/2パック
なす...2本
長ねぎ...1/2本
ごま油...大さじ1
カツオ節と昆布のだし汁 700ml
キビ砂糖...小さじ1
しょうゆ...大さじ2
塩...小さじ1
酒...大さじ2
おろし生姜...少々
[作り方]
1. しいたけは薄切りに、しめじとまいたけは石突を切って食べやすい大きさの小房にする。
なすは縦半分に切ってから斜め薄切りに、長ねぎは斜め薄切りにする。
2. 鍋にごま油を入れて熱し、なす、しいたけ、まいたけ、しめじを入れて、弱めの中火で水分が出てしんなりするまでよく炒める。
3. だし汁と酒を入れ、アクを取りながら煮て、キビ砂糖、しょうゆ、塩で調味する。
4. 大きめの鍋にお湯をたっぷりと沸かし、温麺をパラパラとほぐしながら入れ3分ゆでる。
5. すぐにざるに移し、冷水でぬめりを取りながらよく洗い、水切りをする。
6. 3にゆでた温麺と長ねぎを入れ、ひと煮立ちさせる。
7. 器に盛り、おろし生姜を添える。
(白石温麺)
白石地区の製麺所各社から、様々な白石温麺が造られています
(使用する野菜)
季節のきのこをたっぷり使いましょう。いいダシが出ます
(材料カット)
食べるとき、具材がそばに絡まるように切ります
(炒めた野菜)
ごま油でしっかりと炒めると、かさが炒める前の1/3ぐらいになります
(ゆでた温麺)
しっかりと洗ってぬめりを取ると、ツルッと舌触りのいい麺に
(完成)
温麺2束はたっぷり大盛りの2人分。小食の人なら2束で3人分でもいいかもしれません