日増しに寒くなっていく今日この頃。この時期は体がなれていないせいか、寒さが堪えます。毎年「この冬を乗り越えられるのか」とさえ思ってしまうのは、私だけでしょうか(おそらく、年齢のせいもあるのでしょう)。服を重ね着したり、仕事中もひざにブランケットをかけたりして、外から体を温めるのですが、やはり芯からは温まりません。そんなとき、辛い料理でホカホカになりたいと思うのです。そこで今回は、唐辛子をクローズアップしてみることにしました。
唐辛子の名前は「唐」から伝わった辛子という意味です。ただし中国に唐辛子が伝わったのは17世紀前半で、唐ではなく明の時代。実は日本への渡来の方が先だったようで、当時は唐から来たものでなくても、唐の名前を付けることが多かったようなのです。また、南蛮から伝わった「南蛮辛子」、辛子の部分を省略して「南蛮」と呼ばれることもありますね。実際には、唐辛子は朝鮮半島から渡ってきたという説が強いようです。
一般に唐辛子といってもその種類はいろいろ。日本産で最も辛みが強いとされているのは「熊鷹」という赤唐辛子の品種で、その多くは乾燥させて香辛料として使われます。またしし唐(獅子唐)も唐辛子の一種。食べていくと時々辛い実に当たって、眉をひそめた経験は誰にでもあるでしょう。その他、京野菜で辛味のない「伏見甘」や「万願寺唐辛子」もあります。
ただし日本では現在、市場に出回っている唐辛子の約9割を輸入に頼っています。外国産も各国、種類豊富です。小粒で辛い「カイエン」はタバスコの原料や、粉状にしてカイエン・ペッパーとして利用されています。近年、話題の「ハバネロ」は、オレンジ色で丸みがあり、世界一辛いといわれていますね。主にピクルスになる「ハラペーニョ」や「セラーノ」、辛いタイ料理に欠かせない小粒の「プリッキヌー」、同じく辛い料理の多い中国・四川原産の「朝天辣」などもあります。
唐辛子の辛さの正体は「カプサイシン」という成分。唐辛子を食べて体が温まるのは、カプサイシンが血行をよくして、発汗を促すからです。また食欲を増進させたり、脂肪を燃焼させて肥満を予防する効果もあるといわれています。その他、炭水化物の消化も助けてくれたり、免疫力の向上、殺菌効果などもあります。唐辛子を食べることで塩分に対する味覚が高まるため、料理の塩分を控えられるというメリットもありますね。ただし過剰摂取は禁物。味覚が麻痺したり、胃の粘膜を傷つけたりするので、ほどほどに。
最近ではカプサイシンを繊維に練り込んで体を温める下着や靴下も製品化されていますね。わざわざ買わなくても、唐辛子を砕いて袋に詰めて靴下に入れるだけでも温まるとか。この冬は唐辛子で、内からも外からも温まりましょう。
レシピ「クイティアオ・ナーム(タイ風汁麺)」
乾燥の唐辛子は保存が効いて便利ですが、生の唐辛子は香りと甘みがあります。でも使いきれず、もてあましてしまうことも多いですね。そんなときは、自家製調味料を作りましょう。唐辛子のヘタを取って、漬け込むだけの簡単調味料。どれも様々な料理に活用できます。ポイントは唐辛子が空気に触れないようにしっかりと浸すこと。これで生の唐辛子でもカビることはありません。中身が減ってきたらまた継ぎ足して、唐辛子の味わいがなくなるまで使えます。
● 唐辛子&オリーブオイル...にんにくを足して調理すれば、パスタ料理の定番「アーリオ・オーリオ・ぺペロンチーノ」が作れます。できあがったパスタやピッツァ、肉・魚料理にひとかけすれば、コクが深まります。
● 唐辛子&酢...特にラーメンなど麺料理におすすめの調味料。タイの屋台では、唐辛子をつけた酢が卓上に常備されていて、これをかけて麺料理の味を調整して食べます。またから揚げなどの揚げ物などにひとかけすると、さっぱりといただけます。
● 唐辛子&泡盛...沖縄の食堂に行くと卓上に置いてある調味料「コーレーグース」の作り方と同じ。ただし正確にはコーレーグースは沖縄原産の小粒の「島唐辛子」という種類で作られます。沖縄そばにかける他、ゴーヤーチャンプルーの仕上げや、カレーや鍋料理のアクセントにもおすすめです。
唐辛子&酢をかけると、一気ににアジアンテイストに変身する、タイ屋台料理の定番「クイティアオ・ナーム」を作りましょう。クイティオアとは米を使った麺料理のことで、ナームは汁あり麺のこと。汁なしは「クイティオア・ヘン」といいます。今回はセンレックという中細麺を使用しますが、タイの屋台では麺の種類が選べます。
[材料 2人分]
乾燥米麺(中細のセンレック)...90g
鶏のスープストック(市販の鶏がらスープの素を使用しても可)...600ml
にんにく...1片
香菜(コリアンダー)...2本
もやし...1/2袋
ナンプラー...大さじ2
砂糖...小さじ1
塩...少々
こしょう...少々
サラダ油...小さじ1
唐辛子&酢...適量
※好みで魚のすり身団子、かまぼこ、揚げワンタン、厚揚げ、ゆでたエビなどをトッピングしましょう。
[作り方]
1. 鍋にサラダ油、にんにくと香菜の根の部分のみじん切りを入れて炒め、少し色づいて香りが出てきたらスープストックを加え煮立たせる。
2. 乾燥米麺はぬるま湯に2分くらい浸して固めに戻し、水気を切る。
3. 1にナンプラー、砂糖、塩、こしょうを加えて味を調える。
4. 別のなべにたっぷり湯を沸かし、2の米麺ともやしを入れて30秒温め、丼に盛り、3のスープをかける。
5. 香菜をちぎって乗せる。
6. 食べるときに唐辛子&酢を少しずつかけて、混ぜ合わせ、好みの味に調整する。
(調味料3種)
長野県諏訪郡原村で生産された唐辛子で作りました。左から唐辛子&オリーブオイル、唐辛子&酢、唐辛子&泡盛
(乾燥米麺)
タイの米麺は輸入食材店やスーパーでも手に入ります
(香菜)
タイ名はパクチー。根の部分は捨てずに、みじん切りにして加えるのがポイント。よい香りのスープになります
(完成)
イワシのつみれをトッピングしてみました。唐辛子&酢を少しずつ入れて味をみましょう。甘み・酸味・辛みがおいしさです