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根のある暮し第19回「耕作(こうさく)放棄地(ほうきち)を開墾(かいこん)する」

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  農山村巡りをしていて、車窓から左右に広がる田園地帯を見ていてあることに気がつきました。地域によっては農地の所々にススキなどが生えているのです。山の近くの農山村に行くと、その割合は増えていくようにも感じました。そして、聞いてみるとそれは"遊休農地"、あるいは"耕作放棄地"と呼ばれる生産をお休みしている田畑なのだそうです。
  食糧自給率が41%と低いのは農地が足りないから?とか、国産の物より輸入の物を食べる人が多いから?と思ったりもしていました。

  ちょっと調べてみました。2000年の農業センサスによれば、全国の耕地面積は約469 万ヘクタールで、そのうち都市部や中山間地まで広がる耕作放棄地は約38.6 万ヘクタールもあるのです。農地の1割を超えていますね。しかも5年前の調査に比べて約4万ヘクタール(12.2%)増加しているというのです。驚きました。
  農山村地域の過疎・高齢化により耕す人がいなくなってしまったことが原因です。

  以前、私が初めて"限界集落の耕作放棄地の開墾"ということに関心を持つきっかけとなったのは、2年前にNPOえがおつなげての曽根原久司さんに出会ったことでした。曽根原さんは、山梨県北杜市増富という人口600人あまりの限界集落で、活動し、耕作放棄地3.5haを開墾し、再び農地に戻す活動をしています。その取組みは以前このコラムでも紹介しました。

※第4回「サステナブルな小さな村づくり。山梨県の集落の挑戦」
http://www.469ma.jp/health/2008/12/post-9.html

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皆で力を合わせて開墾する

  その後、私は仲間達と開墾に行くようになりました。場所は増富です。何しろ集落の農地の2/3は耕作放棄地ですから、開墾する場所は沢山あります。しかし、耕作されなくなった年数によって、その様相は変わります。数年程度であれば、ススキが沢山生えているくらいですが、10年を超えると木が生えてきます。20年も立てば、まるで林のようです。こうなってはもう山林に戻すしかありません。

 

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                                     まるで林。ここがかつて農地だったとは・・・

 

  機械も入らないようなところも少なくありませんし、まずは人力(じんりき)で開墾することにこだわります。大鎌でススキを刈り、根はスコップで掘り起こします。大きなものは一人ではできません。数人で、周囲を掘り起こしていきます。また、木の場合は伐採をした後、根をこれも皆で掘って抜きます。根は15分位かかってやっと抜けます。最後はロープをかけて、皆で引っ張ります。根が抜けた瞬間は、歓声が上がります。汗をかき、グループで何かを達成した感じがわき上がるのです。

 

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体験した人の感想をご紹介すると、

「開墾の面白いこと!!!
目の前にある根っこを、皆と協力しながら黙々と作業し、抜けた時の達成感。
あんな風に力を思いっきりこめて、何かと格闘することも普段の生活ではないですよね?。
土と触れることや、思いっきり力をこめたり、身体中がヘロヘロになって脱力したりもすることで、どんどん素の"シンプルな野生"に戻っていく感じでした」 (40代女性、ライター)

「【大地力】がアップしたという言葉がしっくりくると思いました。
普段、大地に触れることが全くない僕が、陽に浴びて、土を嗅いで、風に揺られて、そんな時間を過ごして、人が、本来持っていたんだろう「大地と向き合う力」を充電することができたと思いました。」(20代男性、会社員)

  わざわざ休日に、開墾するために田舎にでかけて行くとは、変わった余暇活動をしていると思われるかもしれませんが、すっかり開墾の魅力にはまった私たちは『開墾マニュアルブック』なるものの編集プロジェクトも進めているところです。

  田植、草取り、稲刈りなど、一連の米作りや、大豆の種播きから手前味噌づくり体験する人が増えているようですが、この開墾から始めてみると、私たちの先人が山林を切り開いたこと、田畑を作り、作物を植え育てたことに思いが及びます。あなたのお住いの地域でも、開墾から体験できるところがあるかもしれません。また、私が理事を務めるNPO農商工連携サポートセンターでは、開墾付きの農業体験ツアーを開催していますので、時々WEBサイトをチェックしてみてください。

※NPO農商工連携サポートセンター
http://www.npo-noshokorenkei.jp/experience/index.html