2005年頃にテレビや雑誌などで取り上げられ、健康に気遣う人たちの間で、ちょっとしたブームになった「テンペ」をご存知ですか? テンペとはもともとインドネシアで、なんと400年以上も前から食べられてきた伝統的な日常食。ハイビスカスやバナナの葉の表にいるテンペ菌という菌で、大豆を発酵させて作る発酵食品です。大豆の発酵食品といえば、日本人は納豆を思い浮かべますが、テンペは糸をひいたり強いにおいがなく、淡白な味が特徴。しかもその栄養価も大注目なのです。
テンペは食物繊維や良質の植物性たんぱく質、カリウム、カルシウム、鉄、リノール酸、レシチン、ビタミンBを多く含んでいます。また、近年更年期障害を緩和してくれるといわれている大豆イソフラボンも豊富。しかも他の大豆食品に比べ、発酵によって身体に吸収されやすくなっています。例えば、一般に推奨されている1日あたりの大豆イソフラボンの量を味噌汁で摂ろうとすると、15杯にもなってしまいますが、テンペなら50gほどで摂取できるといわれています。さらにテンペには精神安定や血流改善に効くといわれるGAVA(γ=アミノ酪酸)も含まれています。こうして書き並べると、栄養がギュッと詰まっているのがわかりますね。アメリカでも1980年代に、様々な研究で栄養価の高さが注目され、ベジタリアンの間で肉や魚に代わるものとして、ブームになったそうです。日本でも栄養価の高さから、成長期にある子供たちの給食の食材にもなっているようです。
テンペ菌は菌糸が大豆に増殖して大豆の表面を覆うため、ブロック状の塊になっています。一見、「どうやって食べたらいいの?」と疑問に思ってしまうかもしれませんが、薄くスライスして使うのが一般的。ちなみにインドネシアでは塩やスパイスで味付けしたテンペを、油で揚げたりケバブのように焼いたり、ココナツミルクで煮てスープなどにします。そのまま焼いてしょうゆやポン酢などで食べるのもいいのですが、納豆よりも調理法が豊富で、様々な食材と相性がいいのがテンペの最大のメリット! いろいろな料理に使ってしまいましょう。野菜と一緒に炒めたり、焼いてサラダに加えてもボリュームが出ておいしい。カレーやシチュー、餃子の具やハンバーグ、コロッケなどに加えてもヘルシーでおいしいですよ。最近国内では、板状のみならず、粉末やペーストなどのテンペの開発も進んでいるようです。様々な形状のテンペが気軽に買えるようになったら、さらに料理のバリエーションが増えそうですね。楽しみ!
レシピ「テンペの白菜ロール」
ひき肉と野菜で作る白菜ロールは、母から教わった私の定番料理。そこでひき肉の分量を減らしてテンペを加えてみたら、ヘルシーなうえ、味わいもぐっとアップしました。ひき肉は煮ると引き締まってしまうのですが、テンペは煮ても大豆が柔らかくてフワフワ。しかも、しっかりと煮汁を含んでくれます。キャベツロールにしてもおいしそう。今回は和風に作りましたが、トマトソースやホワイトソースなら、お子さんも大喜びですね!
[材料4個分]
テンペ...100g
白菜の葉...4枚
にんじん...20g
いんげん...4本
鶏ひき肉...150g
卵...1個
だし汁(かつお、または昆布)...150ml
しょうゆ...大さじ2
酒...小さじ2
砂糖...小さじ1
しょうが汁...少々
塩・こしょう...少々
[作り方]
1. 冷凍のテンペの場合は室温で解凍する。白菜の葉は芯の部分を削ぎ切りして、葉を塩茹でする。白菜の芯とにんじんは長めの拍子切りにする。いんげんはヘタを切り落とす。
2. 鶏ひき肉をボールに入れ、卵、塩、こしょうを加えてよく混ぜ、4等分する。
3. テンペは棒状に4等分する。
4. 茹でた白菜の水気をふき、中央より下の部分に2の鶏ひき肉を1/4量敷き、いんげん、にんじん、白菜の芯、テンペの1/4を棒状になるように並べる。芯の部分から白菜を巻き、ロール状にする。これを4つ作る。
5. 小鍋にだし汁、酒、砂糖、しょうゆ、しょうが汁を入れて沸かし、3の巻き目を下にして、なるべく隙間ができないように並べる。
6. 落し蓋をして中火で10分間煮て取り出し、輪切りにして皿に並べる。
テンペ菌で覆われた大豆。テンペ菌はまるでカマンベールチーズのよう
今回は小さめの白菜を使っていますが、大きな葉の場合は、
もう少し手前に具を乗せましょう
楊枝などでとめる必要はありません。ただし隙間なく並べるのが大切です
野菜がシャキシャキ、テンペがフワッ。いろいろな歯ごたえが楽しいですよ