今年は国際森林年ですね。日本の国土の67%は森林。森は水や土が育まれるところ。豊かな森は、豊かな川、田畑、そして漁場へとつながっています。私たち日本人は、森によって生かされ、癒されてきました。そんな森の恵みを活かして仕事をしてきたお一人がオークヴィレッジ代表の稲本正さんです。
◆100年使えるモノを
「オークヴィレッジ」の稲本正さんが東京を離れ飛騨高山に移住し、家具工房を開設したのは1974年のこと。72年に『成長の限界』という本に出会い、「21世紀は環境の時代になる」と確信し、長く使える家具を作ろう、自分達で木を植えていこう、と思いたったからだそうです。周辺8haの荒地を得て広葉樹の育林を含め、工芸村を立ち上げることから始めました。高山を拠点に、「100年かかって育った木は、100年使えるモノに」を理念に、再生可能な資源である樹木を使って、お椀から家具、木造住宅まで、伝統的な技術でモノづくりをすることで、縄文時代からあった日本の木の文化の再生に取り組んできました。
オークヴィレッジ全景
そして、2009年から販売を始めたのが、日本産アロマ「yuica」(ゆいか)です。アロマと聞くと、ラベンダーやミントなどをイメージしますし、多くのエッセンシャルオイルは輸入されています。が、日本の樹木からもエッセンシャルオイルを抽出することができるのです。「スギ」「ヒノキ」の香りを始め、珍しいところでは楊枝に使われる「クロモジ」があります。その香りはシャネルの香水にも使われているローズウッドに似た大変優美な良い香りです。
◆森も地域の人も元気に
「これは"枝葉ビジネス"。地域のお年寄の収入にもなっているんです。」と稲本さん。
エッセンシャルオイルを抽出する木の枝や葉を、地域の山を知り尽くしたお年寄りが山から取って来て、それによって収入を得るコミュニティビジネスでもあるのです。「yuica」という森の恵みで私たちの心身が癒され、森の手入れにもつながり、地域の人々や森の健康が回復されるのではないでしょうか。
クロモジの枝葉とアロマオイル
また、震災後にオークヴィレッジでは間伐材を使った復興住宅の提案や、避難所で「yuica」を使ったアロママッサージ、子供たちに積木を贈る活動など積極的に取り組んでこられました。無垢の木材は温かさが違います。積木は樹種の異なる木材から作られていて、色や木目が異なります。
間伐材による復興住宅
色々な種類の木でつくられた玩具
戦後に造林した木材は、現在伐期(ばっき)を迎えています。国産材を使うことは、健全な森づくりにつながります。命の源でもある森。
かつて寺山修司という詩人・劇作家が書いた『書を捨てよ、町へ出よう』という本のタイトルではありませんが、今年の夏は「暑を捨てて、森へ行こう」。涼を求めて、森を歩いてみませんか?
※ yuica http://www.yuica.com/