「リトルプレス」をご存知ですか?個人や仲間とつくる小冊子のことで、大手の流通を通さずに販売する出版物です。全国各地でリトルプレスが出版されています。金沢の『そらあるき』、倉敷の『暮らしき』など、それぞれ地域の魅力を丹念に暮らし目線で取材し制作されています。各地のリトルプレスを集めている書店もあります。
各地で発行されている
『弁当と傘』というリトルプレスが兵庫県豊岡市でも10月下旬に発行されました。一瞬このタイトルを見て、どういう意味?と思ったのですが、ああそうか「弁当忘れても、傘忘れるな」は、子供が学校に行くときに、おばあさんが毎日そう言うほど、豊岡や但馬(たじま)地域は雨が多いという話を聞いたことを思い出しました。
表紙は豊岡市城南町にある昔ながらの商店に3歳の女の子が傘を持って立っている写真です。懐かしい温かい気持ちになる表紙です。もくじページには菜の花が満開の円山川の美しい写真が載っています。
『弁当と傘』
創刊号ということもあり、特集は「人をとりこにする鳥 コウノトリ」。出石の皿そばや、但馬唯一の映画館である「豊岡劇場」、なつかしいおやつなど紹介されています。行ってみたい、食べてみたいものがいくつもありました。今日の弁当というページには中貝市長の愛妻弁当も。ご飯はもちろんコウノトリ育む農法で育てられたお米だそうです。
『弁当と傘』を制作したのは豊岡や但馬が大好きなデザイナー、ライター、企画などの仕事をしている30代の女性4人です。そのお一人である山根和恵さんにお会いしてきました。山根さんは「蜩珈琲(ヒグラシコーヒー)」戸牧(とべら)店の店長さんです。
蜩珈琲店長の山根さん
蜩珈琲が豊岡にオープンしたのは82年前の1930年のこと。山根さんは創業者のお孫さん大阪の大学を卒業して豊岡に戻り、蜩珈琲本店で5年務めた後、戸牧店の店長になりました。本店時代は商店街の販促委員会に所属し、色々なイベントや企画を提案し実施してきました。そして2年前、『弁当と傘』の発行人でありこの本の企画を温めていたグラフィックデザイナーのスワミカコさんと出会いました。今年3月末からメンバーはそれぞれ仕事の合間をぬって取材や編集にあたり、半年余りをかけて完成しました。
「町がどんどん新しいものに切り替わっていく。古い店など良いものが無くなってしまうので、残していきたいものを紹介していこうと。」と山根さん。
よそに行っていたからこそ、改めて気がついた故郷但馬の魅力。建物は一般的には経年劣化していくと言われますが、住まい手や地域の人たちが大切にしていくことで、建物も町も経年優化させることができると思います。
豊岡市のアンテナショップ。今年9月オープン
32ページ、フルカラーで600円。蜩珈琲店で買うことができます。すでに鳥取、福知山、大阪、京都、そして東京の有楽町交通会館1Fにある豊岡市のアンテナショップ「コウノトリの恵み 豊岡」でも販売されているということです。
あなたの街にもリトルプレスありますか?