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第40回根のある暮らし 「蕪栗沼・ふゆみずたんぼプロジェクト」

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「蕪栗沼・ふゆみずたんぼプロジェクト」は、震災復興と地域活性化のために宮城県大崎市が取り組むプロジェクトです。大崎市には日本最大のマガン越冬地である「蕪栗沼」があります。蕪栗沼と周辺水田は、200511月にラムサール条約湿地にも登録されました。冬になるとシベリアから渡ってくるマガンや白鳥などの渡り鳥が10万羽を超え、昼は沼周辺の田んぼで落ち穂をついばんだり、水を張った水田で過ごしています。日没前には四方八方から帰ってきて「ねぐらいり」をします。朝、日の出頃にいっせいに田んぼへと飛び立つ姿は、地響きのような音をともない壮観です。3月ともなると、ふたたびシベリアへの4,000kmの帰路につきます。


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朝一斉に数万羽のマガンが飛立つ


 以前は、蕪栗沼の水面が狭く、年々増える渡り鳥が越冬できる環境を保つことや、沼の水質悪化を防止すること、そして渡り鳥が稲の穂を食べてしまう食害が、大きな課題となっていました。そこで、2003年、地域の10軒の農家が、これらの問題を解決するために、渡り鳥との積極的な共生を目指す取組みを始めました。それが、冬期間水田に水を張る「ふゆみずたんぼ」です。冬は田んぼを渡り鳥の休息地として、春から秋にかけては有機栽培でお米づくりを行います。


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日中田んぼで過ごす白鳥


 「ふゆみずたんぼ」により冬場に稲わらの分解が進み、今では微生物や生きものがすっかり豊富な土壌になりました。生きものとの共生をめざす農家の思いが育んだ「ふゆみずたんぼ米」の誕生です。ちなみに大崎市はササニシキやひとめぼれ発祥の地でもあります。一粒一粒に大自然の命が宿る、自然にも身体にもやさしいお米ができるようになりました。


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黄金の稲穂。上空にマガンの群れ


 地域の農家、NPO、市民、事業者、自治体が協働し、取組んできた豊かなコミュニティづくり。生地域の人々の営み、自然の美しさ、命の大切さを沢山の方に知っていただきたい、ふゆみずたんぼを広めたいという思いで、「蕪栗沼・ふゆみずたんぼプロジェクト」(2011年度、総務省「緑の分権改革調査事業」)が始まりました。


 プロジェクトでは絵本や映像の制作をはじめ、仙台で開かれているマルシェやツアーを開催してふゆみずたんぼや渡り鳥、そこでできたお米のプロモーション活動に着手しているところです。また、蕪栗沼の陸地化を防ぐために沼に生えている葦(よし)をペレットに加工して、熱源に使おうという試みも行っています。さらに、「ふゆみずたんぼ」が津波被害を受けた水田の塩害抑制に効果があることから、南三陸や石巻などの周辺自治体の被災水田のふゆみずたんぼによる復興にも取り組んでいます。


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上空から見た蕪栗沼


 ふゆみずたんぼによる有機農業、10万羽を超える渡り鳥との共生、美しい自然など、命を育み、大切にする温かい気持ちが地域の人たちから伝わってきます。ここでも、地域の市民、農家、NPO、事業者、自治体が協働し、豊かなコミュニティが育まれています。