大根の古くからの呼び名は「すずしろ(清白)」。そう、春の七草のひとつです。大根には消化酵素のジアスターゼが豊富に含まれており、消化を促進して胃酸をコントロールし、胃もたれや胸焼けを解消します。その効果は胃腸薬にも配合されるほど! 年末年始の暴飲暴食で、疲れた胃腸を復活させるのにピッタリの野菜です。胃腸が弱ってくると、体力や免疫力が低下して、風邪もひきやすくなるので、ぜひこの時期に大根を食べて体調を管理しましょう。
大根の成分は胃腸の働きを助ける他、辛みにはアリルイソチオシアネートというからし油の成分があり、痰を切る効果もあります。また大根に含まれるビタミンCは、肝臓の働きを助ける作用があるため、飲み過ぎにも有効です。
大根の旬は秋冬で、全体の7割を占めます。日本の大根生産量は世界一とされていますが、作付面積・収穫量とも減少してきているのが現実です。また現在の主流品種は「青首大根」で、作付面積の98%を占めるそうです。辛みが少なく甘みが強いこと、地上に伸びる性質が強く収穫作業が楽なことなどから昭和50年代に急速に普及しました。水分が多くて柔らかく、煮崩れしにくいので調理がしやすく、おろしても辛味が少ないのが特徴です。
その他の品種には、世界最大の大根として有名な「桜島大根」、カブのような形の京野菜「聖護院大根」、汁気が少なくとても辛いミニサイズの「辛味大根」、ゴボウのように細い「守口大根」、緑の部分が少ない「白首大根」などがあります。また神奈川産の「三浦大根」は大正時代に地大根と練馬種を交配改良したもので、かつてはおでんや正月のなますは三浦大根に限る、というほどだったのですが、今ではほとんど見られなくなりました。そのいちばんの理由は大き過ぎること。株間を多く取らなければいけないため、作付けが少なくなってしまううえ、収穫の時に力がいるため作業が大変です。さらに店頭でも場所を取り過ぎてしまうため、敬遠されるようになってしまいました。これだけたくさんの品種がありながら、青首大根ばかりになってしまったのは少し残念でなりません。料理に合わせて様々な地大根を選べるようになることを願っているのは私だけではないでしょう。
さて、大根は葉に近い部分ほど辛味が弱く、下にいくほど辛味が強くなります。また大根おろしにする際、甘くしたいときは葉に近い方を使用し、おろし金に対して垂直に立て、優しく円を描く様におろすのがコツ。一方ピリッとした辛さを味わいたいときは先端部分を使用して、おろし金に対して直線的に、力強くおろすのがコツ。細胞がより細かく破壊され、辛み成分が活性化するからです。
最後に「大根役者」の語源について。様々な説があるものの、大根は食材として利用範囲が広く、どのような調理で食べても消化を促進し、めったなことでは食あたりしないことから、「役者として当たらない」=「大根役者」となったというのが有力です。大根のいいところが、マイナスの慣用句に使われているのですね...。
レシピ「大根と手羽元のトマトスープ煮」
大根といえば和食になりがちですが、洋風のスープ煮にすれば子供も喜んで食べてくれそうです。しかも鶏とトマトでダシが出るため、調味料は塩・こしょうのみと簡単! 捨ててしまいがちな葉の部分も、ビタミンCやビタミンAなどがたっぷり含まれています。薬味に使って一緒に食べましょう。大根と鶏手羽元を短時間で柔らかく仕上げるため、今回は圧力鍋を使用しましたが、普通のお鍋で作る場合は弱火で30分くらい、アクを取りながらじっくりと煮てくださいね。
[材料約3-4人分]
大根...1/2本
鳥手羽元...4-5本
ミニトマト...8個
サラダ油...小さじ2
塩・こしょう...適量
[作り方]
1. 大根は皮をむき、2?くらいの厚さの半月切りにする。葉は根に近い部分を小口切りにする。
2. 圧力鍋にサラダ油を入れて弱めの中火で鶏手羽元の皮の部分を下にして焼付け、裏返して両面に焼き色をつける。
3. 大根を加え、両面に焼き色をつける。ヘタを取ったミニトマトを加えて、ヘラなどでトマトをつぶしながら炒める。下味に塩少々を加えて炒め合わせる。
4. 水600mlを加えてふたをして、沸騰してから10分間煮る。火を止め、そのまま自然放置して内部の圧力を下げてからふたをはずす。
5. 再び火にかけて味見し、塩・こしょうを加えて調味する。小口切りにした葉の部分を加えて火を止める。
青首大根です。保存の際は葉から水分が蒸発してしまうため、葉を切り取っておきましょう
今回使用しない大根の皮も捨てずに、細切りにして大根の葉の小口切りとちりめんじゃこと一緒に炒めてキンピラにするのがおすすめです
コンソメを使わない代わりにしっかりと焼き色をつけるのがコツ。おいしいダシが出ます
圧力鍋での調理はふたを開ける瞬間が楽しみ。おいしそうなスープに仕上がりました