OFDMとは?仕組み・メリット・FDMやOFDMAとの違いをわかりやすく解説

OFDMとは?

「OFDM」という言葉をWi-Fiルーターの仕様書や5Gの解説記事で見かけて、結局どんな技術なのか気になっていませんか。OFDMは現代の無線通信を支える基盤技術で、Wi-FiやLTE、5G、地上デジタル放送など、私たちが毎日使う通信のほとんどに採用されています。

この記事では、OFDMの仕組みやメリット・デメリット、混同されがちなFDMやOFDMAとの違いまで、図解と比較表を交えながらわかりやすく解説します。

OFDMとは

OFDMとは、デジタル無線通信で使われる変調方式の一つで、複数の搬送波を「直交」させながら並列にデータを送る技術です。Wi-FiやLTE、5G、地上デジタル放送などで広く採用されており、現代の高速無線通信を支える中核技術といえます。

OFDMの正式名称と読み方

OFDMは「オーエフディーエム」と読み、正式名称は「Orthogonal Frequency Division Multiplexing」です。日本語では「直交周波数分割多重」と訳されます。

項目 内容
英語表記 Orthogonal Frequency Division Multiplexing
日本語訳 直交周波数分割多重
読み方 オーエフディーエム
分類 デジタル変調方式/多重化技術

OFDMを一言でいうと

OFDMを一言で表すと、「直交する多数のサブキャリア(搬送波)にデータを分割して並列に送信する変調方式」です。一本の太い回線でデータを送るのではなく、たくさんの細い回線を同時に使うイメージに近い技術です。

OFDMが注目される理由

OFDMが注目される最大の理由は、限られた周波数帯域を非常に効率よく使えること、そして電波の反射や干渉に強いことです。Wi-Fi 4(IEEE 802.11n)以降のWi-Fi規格、LTEの下り回線、5G NR、日本の地上デジタル放送など、現代の主要な無線通信規格の大半でOFDMが採用されています。

OFDMの仕組み

OFDMの仕組みを理解するうえで重要なキーワードが「サブキャリア」と「直交性」の2つです。ここではこの2つを軸に、OFDMがどのようにデータを送っているのかを順番に解説します。

サブキャリアとは

サブキャリアとは、OFDMで使われる「狭い帯域幅の搬送波」のことです。OFDMでは、割り当てられた周波数帯の中に多数のサブキャリアを並べ、それぞれにデータを少しずつ載せて同時に送信します。たとえば1つの広い帯域を64本や256本のサブキャリアに分割し、並列伝送することで高速化を実現しています。

「直交性」とは何か

OFDMの最大の特徴は、隣り合うサブキャリア同士を「直交」させる点にあります。直交とは、隣り合う搬送波の位相を90度ずらすことで、あるサブキャリアの中心周波数では両隣のサブキャリアの信号強度がちょうどゼロになる状態を指します。

この性質により、サブキャリア同士の周波数帯域が一部重なっていても干渉が起こらず、高密度に周波数を利用できます。

スペクトルを重ね合わせて高密度伝送する仕組み

従来のFDM(周波数分割多重)では、サブキャリア同士が干渉しないように一定の周波数間隔(ガードバンド)を空ける必要がありました。一方OFDMでは、直交性のおかげでサブキャリア間の間隔を狭くしてスペクトルを重ね合わせられるため、同じ帯域幅でより多くのデータを送れます。

▼ FDMとOFDMのスペクトル比較イメージ

方式 サブキャリアの配置 周波数利用効率
FDM │■│ ガード │■│ ガード │■│ 低い
OFDM │■■■■■■■■■│(重ね合わせ) 高い

OFDMの一次変調(QAM・PSKとの関係)

OFDM自体は「多重化」の方式であり、各サブキャリアにデータを載せる際には別の変調方式が使われます。これを「一次変調」と呼び、一般的にはQAM(直交振幅変調)やPSK(位相偏移変調)が使われます。たとえばWi-Fiでは16QAMや64QAM、256QAM、Wi-Fi 6では1024QAMなどが使われ、各サブキャリアにより多くの情報を載せられるようになっています。

OFDMのメリット

OFDMが多くの無線通信規格で採用されているのは、明確なメリットがあるからです。ここでは代表的な4つの利点を解説します。

周波数利用効率が高い

OFDMはサブキャリア同士のスペクトルを重ね合わせられるため、同じ帯域幅で従来のFDMよりも多くのデータを送れます。限られた電波資源を効率よく使えるため、高速通信の実現に欠かせない技術となっています。

マルチパスフェージングに強い

無線通信では、電波が建物や地面などで反射し、複数の経路を通って受信機に届く「マルチパス」という現象が発生します。これにより信号が打ち消し合って劣化することを「マルチパスフェージング」と呼びます。

OFDMでは1本あたりのサブキャリアの帯域が狭く、シンボル長が長いため、マルチパスによる影響を受けにくい性質があります。さらに「ガードインターバル」と呼ばれる空白時間を挿入することで、反射波による干渉をほぼ完全に防げます。

ノイズや干渉に対する耐性

OFDMは多数のサブキャリアにデータを分散させているため、一部のサブキャリアにノイズや干渉が発生しても、他のサブキャリアでデータを補えます。この特性が、屋内外を問わず安定した通信を実現する基盤になっています。

誤り訂正と組み合わせやすい

OFDMは誤り訂正符号化(前方誤り訂正:FEC)と組み合わせることで、通信品質をさらに向上できます。地上デジタル放送のように、ノイズの多い環境でも安定した受信が求められる用途では、誤り訂正と組み合わせた「COFDM」として運用されています。

OFDMのデメリット

多くのメリットを持つOFDMですが、技術的にはいくつかの課題もあります。ここでは代表的な3つのデメリットを紹介します。

PAPR(ピーク対平均電力比)が高く電力消費が大きい

OFDMは多数のサブキャリアを同時に送信するため、瞬間的に電力が大きく跳ね上がる「ピーク」が発生しやすい特性があります。これをPAPR(Peak-to-Average Power Ratio)と呼び、PAPRが高いと送信機の電力増幅器に大きな負担がかかり、消費電力が増えます。

このため、バッテリーで動くスマートフォンの上り回線(端末から基地局への送信)では、PAPRの低いSC-FDMAなどの方式が代わりに使われることがあります。

実装が複雑でコストがかかる

OFDMは高速フーリエ変換(FFT)や逆フーリエ変換(IFFT)といった複雑な信号処理を必要とします。そのため、ハードウェアの実装には高い処理能力が求められ、機器コストが上昇する要因になります。

周波数同期の精度が求められる

OFDMは直交性に依存した技術であり、送信側と受信側の周波数がわずかでもずれると、サブキャリア間の直交性が崩れて干渉(ICI:キャリア間干渉)が発生します。そのため、高精度な周波数同期や位相同期が必要になります。

OFDMとFDMの違い

OFDMは名前のとおりFDM(周波数分割多重)の一種ですが、実際にはかなり大きな違いがあります。ここでは両者の違いを整理して解説します。

FDM(周波数分割多重)の基本

FDMとは、1本の通信路を複数の周波数帯に分割し、それぞれの帯域に異なる信号を割り当てて同時に送信する多重化技術です。アナログラジオ放送のAM・FMもFDMの一種で、各放送局が異なる周波数を使って同時に放送している仕組みです。

OFDMはサブキャリアの周波数を「重ねられる」のが最大の違い

FDMでは隣り合う信号のスペクトルが重なると混信が発生するため、ガードバンドと呼ばれる周波数の隙間を空ける必要があります。一方OFDMでは、サブキャリアを直交させることでスペクトルを重ね合わせても干渉しません。この「重ねられる」という点が、FDMとOFDMの本質的な違いです。

項目 FDM OFDM
サブキャリア間隔 広い(ガードバンド必要) 狭い(直交させて重ね合わせ)
周波数利用効率 低い 高い
マルチパス耐性 弱い 強い
実装の複雑さ シンプル 複雑(FFT処理が必要)
代表的な用途 アナログラジオ放送など Wi-Fi/LTE/5G/地デジ

OFDMとOFDMAの違い

OFDMと並んでよく登場するのが「OFDMA」です。文字が1つ違うだけですが、両者は役割が異なる別の技術です。ここではOFDMAの基本と、OFDMとの違いを整理します。

OFDMAとは(直交周波数分割多元接続)

OFDMAは「Orthogonal Frequency Division Multiple Access」の略で、日本語では「直交周波数分割多元接続」と訳されます。OFDMを応用した「多元接続技術」であり、複数のユーザーが同じ周波数帯を同時に使えるようにする仕組みです。

OFDMは「多重化」、OFDMAは「多元接続」

OFDMとOFDMAの本質的な違いは、「多重化(Multiplexing)」と「多元接続(Multiple Access)」という目的の違いにあります。OFDMは1人のユーザーがデータを効率よく送るための「変調・多重化」の技術であり、OFDMAは複数のユーザーが帯域を共有するための「アクセス制御」の技術です。

1ユーザー専有 vs 複数ユーザー同時利用

OFDMでは、ある時刻にはサブキャリア全体を1人のユーザーが専有して使います。一方OFDMAでは、サブキャリアをグループ(リソースユニット)に分けて、複数のユーザーが同時に異なるグループを使えます。これにより、Wi-Fi 6や5Gのような多数の端末が同時接続する環境でも、効率よく通信できるようになりました。

項目 OFDM OFDMA
目的 多重化(変調方式) 多元接続(アクセス制御)
ユーザー数 1ユーザー専有 複数ユーザー同時利用
サブキャリアの割当 全帯域を1ユーザーが使用 グループごとに分けて割当
代表的な採用規格 Wi-Fi 4/Wi-Fi 5/LTE下り Wi-Fi 6/5G NR/LTE下り(一部)
登場時期 1990年代後半~ 2010年代以降に本格普及

OFDMが採用されている主な規格

OFDMは現代の無線通信規格の多くで採用されています。ここでは代表的な5つの分野を紹介します。

Wi-Fi(IEEE 802.11a/g/n/ac)

Wi-Fiの物理層では、IEEE 802.11a(1999年)から本格的にOFDMが採用され、その後802.11g・11n(Wi-Fi 4)・11ac(Wi-Fi 5)まで一貫してOFDMが使われています。Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)からは、OFDMを発展させたOFDMAが導入されました。

LTE(下り回線)

携帯電話の4G規格であるLTEでは、基地局から端末へ向かう「下り回線」にOFDMA(OFDMを応用した多元接続)が採用されています。一方、端末から基地局へ向かう「上り回線」では、消費電力を抑えるためにOFDMの派生方式であるSC-FDMAが使われています。

5G NR

5Gの無線インターフェース「5G NR(New Radio)」では、上り・下りの両方でOFDMをベースにした方式が採用されています。サブキャリア間隔を周波数帯に応じて変えられる「スケーラブルOFDM」が特徴で、超高速通信(eMBB)と超低遅延通信(URLLC)の両立を実現しています。

地上デジタル放送(ISDB-T/DVB-T/DVB-T2)

日本の地上デジタル放送(ISDB-T)や、欧州のDVB-T/DVB-T2でも、誤り訂正と組み合わせたCOFDMが採用されています。マルチパスフェージングに強い特性が、移動受信や山間部での受信安定性に大きく貢献しています。

電力線通信(PLC)

家庭やオフィスの電力線を使ってデータ通信を行う「電力線通信(PLC)」でも、HomePlugなどの規格でOFDMが採用されています。電力線はノイズが多い通信路ですが、OFDMの干渉耐性が活かされています。

OFDMに関するよくある質問(FAQ)

OFDMとOFDMAはどちらが新しい技術ですか?

OFDMAのほうが新しい技術です。OFDMは1990年代後半からWi-Fiなどで普及した変調方式で、OFDMAはそのOFDMを応用して複数ユーザーが同時にアクセスできるようにしたもので、2010年代以降のLTEやWi-Fi 6、5Gで本格的に普及しました。

Wi-Fi 6でOFDMからOFDMAに変わったのはなぜですか?

Wi-Fi 5までのOFDMでは1台の端末が帯域全体を専有する仕組みだったため、多数の端末が同時接続する環境では効率が低下していました。Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)ではOFDMAを導入し、サブキャリアを複数ユーザーで分け合えるようにすることで、混雑環境での通信効率と遅延を大幅に改善しました。

OFDMはどの試験で出題されますか?

基本情報技術者試験・応用情報技術者試験・ネットワークスペシャリスト試験などの情報処理技術者試験のほか、電気通信主任技術者試験、工事担任者試験、第一級陸上無線技術士などの無線系資格試験で出題されています。

COFDMとOFDMの違いは何ですか?

COFDMは「Coded OFDM」の略で、OFDMに誤り訂正符号化(Coding)を組み合わせた方式です。原理はOFDMと同じですが、誤り訂正を前提に設計されており、地上デジタル放送など放送系の規格で使われています。実質的にはOFDMとほぼ同義として扱われることも多い用語です。

まとめ

OFDMは、多数の直交するサブキャリアでデータを並列伝送する変調方式で、Wi-FiやLTE、5G、地上デジタル放送など現代の無線通信を支える基盤技術です。サブキャリア同士の周波数を重ね合わせられるため、限られた帯域を効率よく使えるのが最大の特徴で、マルチパスフェージングやノイズにも強い特性を持ちます。

OFDMは「1人のユーザーがデータを効率よく送るための多重化技術」であるのに対し、OFDMAは「複数のユーザーが帯域を共有するための多元接続技術」という違いがあり、Wi-Fi 6や5Gではこの両方が組み合わせて使われています。OFDMの仕組みを理解しておくことで、Wi-Fiルーターのスペック表示や5Gの技術解説もぐっと読みやすくなるはずです。