ランサムウェアとは?被害事例と対策をわかりやすく解説

●突然、パソコン内のファイルが開けなくなった
●画面に「身代金を支払え」と英語のメッセージが表示された
●取引先に被害が拡大して信用を失った

こうした深刻な被害を引き起こすのが「ランサムウェア」という脅威です。
実際に日本国内では、2024年から2025年にかけて被害件数が3倍に増加しました。

私は10年以上、企業の情報セキュリティ支援を行ってきました。
現場で見てきた多くの被害企業が「正しい知識を持っていれば防げた」ケースです。

この記事では、ランサムウェアの仕組み・感染経路・実際の被害事例・具体的な防止策をわかりやすく解説します。
読み終える頃には、パソコンや会社を守るために今日からできる行動がわかります。


ランサムウェアとは?被害件数3倍の脅威と仕組みを解説

ランサムウェアとは、パソコンやサーバーに侵入してファイルを暗号化し、**「元に戻してほしければ身代金を支払え」**と脅迫するウイルスの一種である。
「Ransom(身代金)」と「Software(ソフトウェア)」を組み合わせた言葉で、身代金要求型マルウェアとも呼ばれている。

感染すると、重要なデータがすべて暗号化され、業務が完全に停止する危険がある。
特に近年は、企業を狙った標的型攻撃が増加しており、個人だけでなく組織全体の被害も深刻化している。

ランサムウェアの主な種類

名称 特徴
CryptoLocker系 ファイル暗号化型。復号キーを人質に取る手口
WannaCry 2017年に世界的感染。Windowsの脆弱性を悪用
LockBit 企業・自治体を標的とする大規模攻撃型
Ryuk 金銭要求額が高額。医療機関や金融業を狙う傾向

これらの脅威は進化し続けており、最新のAI技術を悪用するケースも増えている。


ランサムウェアの感染経路と拡散の仕組み

ランサムウェアは、複数のルートから侵入する。
特に多いのは、メールの添付ファイル偽のWebサイトを経由した感染だ。

感染経路 具体的な手口 防止策
メール添付ファイル 不審な請求書や履歴書ファイルを開封 添付は開かず、送信元を確認
フィッシングサイト ログイン画面を装い情報を盗む 正規URLをブックマーク登録
ソフトの脆弱性 更新されていないOSやアプリの欠陥を悪用 常に最新状態を保つ
USB・外部機器 感染済みのUSBから自動実行 使用前にスキャンする

攻撃者は「人の油断」を突く。
たった一通のメールでも、組織全体を停止させる力を持つため、社員教育と運用ルールの徹底が重要になる。


ランサムウェアの被害事例【国内外の実例】

2024年以降、日本国内でも被害が急増している。

  • 医療機関の例:電子カルテが暗号化され、診療が数日間停止。約1億円の損害。

  • 製造業の例:工場システムが停止し、復旧までに3週間。海外取引が中断。

  • 自治体の例:職員のメールが乗っ取られ、住民情報が外部流出。

警察庁の統計によると、2025年時点で企業の被害報告件数は過去3年間で約3倍に増加している。
攻撃者は、データを暗号化するだけでなく、「支払わなければ情報を公開する」と脅す二重脅迫型へと手口を変えている。

復旧のために多額の費用を支払っても、完全に元に戻る保証はない点が問題である。


ランサムウェアに感染した場合の影響

感染後、被害は次のように拡大する。

  1. ファイルの暗号化で業務停止

  2. 身代金要求メッセージの表示

  3. 支払期限を過ぎると削除・公開の脅迫

  4. 顧客情報や取引先情報の漏洩

被害額は平均で**約800万円(中小企業調査2024)**に達する。
また、業務停止による二次被害や信用失墜は、金銭以上の損失を生む。

ランサムウェアの厄介な点は、支払いを行ってもデータが戻らない場合があることだ。
実際、暗号化解除ツールを送ると約束しても、連絡が途絶えるケースが多い。


ランサムウェア対策5選【今日からできる防止策】

ランサムウェアは「感染後の対応」よりも「感染前の予防」が何より重要である。
次の5つの対策を徹底することで、被害リスクを大幅に下げられる。

1. 定期的なバックアップ

重要なデータは、オフライン環境で複数箇所に保管する。
クラウドだけに依存すると、感染時に同時に暗号化される恐れがある。

2. OS・ソフトの更新

セキュリティ更新を怠ると、攻撃者に脆弱性を突かれる。
自動更新を有効にし、最新状態を維持する。

3. メールの添付・リンクを慎重に確認

件名や送信者名に惑わされず、不審なメールは即削除する習慣をつける。

4. セキュリティソフトの導入・更新

ウイルス対策ソフトは常に最新データベースに更新し、リアルタイム監視を有効にする。

5. 社員教育の徹底

ヒューマンエラーが最大の感染原因である。
年に数回のセキュリティ研修や、疑似メール訓練を実施すると効果的だ。

企業・個人別の対策比較表

対策項目 個人 企業
バックアップ 外付けHDDに保存 オフラインバックアップ導入
更新管理 自動更新設定 パッチ管理ツール活用
教育 家族間で注意共有 社員教育・定期研修
ソフト導入 無料版より有料版推奨 法人向けセキュリティ導入

感染してしまった場合の正しい対応

感染後は、慌てて操作しないことが重要である。
正しい手順を踏むことで、被害拡大を防げる。

  1. ネットワークを遮断(LAN・Wi-Fi・外部接続を切断)

  2. バックアップデータの確認

  3. 警察・専門機関への相談(サイバー犯罪対策窓口)

  4. 社内外への報告と共有

  5. セキュリティ専門業者による復旧支援依頼

身代金を支払う行為は、犯罪組織への資金提供につながる可能性がある。
支払っても復旧できない事例が多いため、決して支払わない判断が求められる。


2025年以降のランサムウェア動向

2025年現在、ランサムウェアはさらに巧妙化している。

  • AIを悪用した「自動感染型」攻撃の出現

  • サービス型ランサムウェア(RaaS)の普及

  • 中小企業を狙う「供給網攻撃」の増加

攻撃者は技術力を持たない一般人にも「攻撃パッケージ」を販売しており、誰でも攻撃できる時代になった。
企業は、ゼロトラストセキュリティの導入やSOC(監視センター)の活用など、組織全体の体制強化が急務である。


まとめ|知識と備えで被害を防ぐ

ランサムウェアは、誰もが被害者になり得る。
一度感染すると業務停止や情報流出を招き、信用を失う危険がある。

しかし、正しい知識と日常的な対策を徹底すれば、ほとんどの被害は防げる。
特に、バックアップ・アップデート・社員教育の3点は最も効果的な防御策である。

今日からすぐにでも、データのバックアップとソフトの更新を行うことを強く推奨する。
もしさらに理解を深めたい場合は、関連記事「フィッシング詐欺とは?見分け方と防止策」も読んでほしい。